PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.04.12

2007年10月10日 担当:小竹、古屋

Depression and anxiety in patients with hepatitis C: prevalence, detection rates and risk factors
~ C型慢性肝炎患者における抑うつと不安:有病率、検出率、危険因子 ~
出典: General Hospital Psychiatry, Volume 27, Issue 6, 2005, 431-438
著者:Golden, Jeannette, O'Dwyer, Anne Marie,Conroy, Ronan M.
<論文の要約>
目的:
気分障害の有病率、検出率と危険因子を推定するために、C型肝炎のインターフェロン治療を待っている患者グループを調査した。

方法:
精神障害を検出するためにDSM-IV第1軸障害のための構造化面接:臨床医バージョンを用いた。症状の重症度、主観的認知機能、仕事と社会への適応、スティグマ、病気の受け入れや治療満足度の評価には、自記式質問票を使用した。

結果:
90人の参加者は、女性23人(26%)を含んでおり、医原性C型肝炎33人(37%)、注射薬使用によるC型肝炎42人(47%)、そして残り(17%)は原因不明であった。1カ月の抑うつ有病率は28%、そのうちの72%は、未診断であり、不安障害の有病率は24%、そのうちの86%は、未診断であった。今現在のメタドン療法は、抑うつのリスクに強く関連していた(オッズ比、5.0;95%CI,1.08-23.0)。年齢、性別調整後の抑うつは、仕事と社会への適応の低さ、病気の受け入れの低さ、病気に対するスティグマの高さ、思考力や集中力の低さ、そして主観的な身体症状レベルの高さと関連していた(すべてP<.05)。不安障害はどんな危険因子とも関連していなかった。

結論:
抑うつと不安は、C型肝炎において高い有病率を有しており、大部分が検出されず、治療されていない。不安ではなく、抑うつが病気の有害事象に関連している。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>

■サンプルの特徴を把握することについて
⇒本調査のサンプルは、アイルランド人であり、薬物注射による感染やHIVの重感染を含むサンプルとなっている。社会的背景によるところが大きいと思われ、後の解析や考察をすすめる上で、ベースラインで対象者の特徴を把握しておくことは非常に重要である。

■本調査の位置づけについて
⇒抑うつ・不安発症は、C型肝炎への罹患が影響するのか?薬物乱用していることが影響するのか?IFN治療開始前であることが影響するのか?また、IFN治療開始に伴って悪化するのか?など、抑うつ・不安のメカニズムや知見が十分に示されていない。本調査の位置づけを明確にした方がよいのではないだろうか?

■サンプルの特徴と解析のためのカテゴリ化について
⇒年齢が10歳上昇するごとのオッズ比を算出しているが、年齢的背景をよく検討し、用いている解析法なのか?サンプルの特徴(連続して上昇しているのか?ある年代のみ高い傾向があるのか?等など)をよく把握し、投入法を検討することが必要だろう。(ちなみに日本のHCVキャリアは40歳以降の年齢層に偏在の傾向である。)

■研究仮説と解析法について
⇒本調査では、危険因子として2つの経路:病気に関連した変数と病気についての経験や認識 があると仮定し、それぞれを検討している。病気に関連した変数:交絡要因の検討を行い、そのうち関連が有意であったものを調整因子として投入、ロジスティックモデルを組み、結果を示している。従来、うつ病などの気分障害は、多因子疾患であると言われている。複合的評価が必要なのではないだろうか?

前のページに戻る