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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2007.10.31

2007年10月31日 担当:鈴木

Smoking in early gestation or through pregnancy:A decision crucial to pregnancy outcome
~ 妊娠初期あるいは妊娠継続中の喫煙:妊娠予後の重大な決定 ~
出典: Preventive Medicine 44 (2007) 59-63.
著者:Kaisa Raatikainen , Paivi Huurinainen , Seppo Heinonen
<論文の要約>
目的:
妊娠中に、喫煙を継続した女性、1日5本以下に喫煙量を減量した女性、妊娠中喫煙しなかった女性について、それぞれのリスクと、妊娠予後がどうなるのかを評価することを目的とした。

方法:
1989年から2001年までの単胎であった26,414人が登録されている地域ベースのデータベースを解析した。悪い妊娠予後に対するオッズ比を多重ロジスティック回帰モデルから得た。

結果:
妊娠初期における喫煙率は25.7%であり、妊娠20週までに12.7%に減少した。喫煙している女性は、そうでない女性に比べて、若年、初産婦、未婚、アルコール摂取あり、以前の妊娠中に帝王切開などを行っている、といった特徴があった。喫煙継続は、Small-for-gestational-age infants (SGA)(オッズ比2.11)、早産(オッズ比1.15)、周産期死亡(オッズ比1.15)のリスクを上昇させた。SGAは喫煙本数の減量によって予防することができたが、早産や周産期死亡のリスクは上昇した。
表1:妊婦のリスクファクターと喫煙状況との関連
表2:妊娠・分娩状況と喫煙状況との関連
表3:悪い妊娠予後に対する喫煙状況によるオッズ比

結論:
妊娠中に喫煙量を減量した人の行動におけるリスクプロフィールは、非喫煙者よりも喫煙者に近かったにもかかわらず、妊娠初期に、あるいは妊娠中継続して喫煙することは悪い妊娠予後と関連しており、またいくつかの有害な影響は喫煙を中止することで予防できるだろう。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■まず、12年間にわたって26000人余りの妊婦からアンケートによってデータを集めたことはすごい。(期間内のトレンドについても検定している)

■喫煙率が日本に比べてかなり高いのではないか。(日本では2000年の調査で10%、塩山(妊娠初期)は7%程度)

■結果をこのような形で出したのはなぜか?つまり、ダミー変数を用いれば「非喫煙」をリファレンスとして「喫煙減量」「喫煙継続」それぞれのオッズ比を計算可能なのではないか?

■このように妊娠期間中をいくつかの時期に分けて、それぞれの妊娠予後への影響を検討することで、喫煙がどのようなメカニズムで胎児に影響しているのかを推測することが可能ではないか。生物学的なメカニズムを、このようなデータで検証することも可能ではないかと考えられる。



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