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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2007.11.14

2007年11月14日 担当:須田、西村

Perinatal mortality and congenital anomalies in babies of women with type 1 or type 2 diabetes in England, Wales, and Northern Ireland: population based study
~ イギリスのウェールズ地方と北アイルランドに住むⅠ型またはⅡ型糖尿病の母親達から生まれた赤ちゃんの周産期死亡率と先天性異常について:特定地域を対象とした調査より ~
出典: 著者:Mary C M Macintosh, Kate M Fleming, Jaron A Bailey, Pat Doyle, Jo Modder, Dominique Acolet, Shona Golightly, Alison Miller
<論文の要約>
目的:
イギリスのウェールズ地方と北アイルランドに住むⅠ型またはⅡ型糖尿病の母親達から生まれた赤ちゃんの周産期死亡率と先天性異常の割合について明らかにする

デザイン:
妊娠コホートをベースとした特定地域の調査

背景:
イギリスのウェールズ地方と北アイルランドの231の産科病棟

主要な方策の規定:
死産率、周産期死亡率、先天性異常の有病率

結果:
2359人の糖尿病の母親のうち、652人がⅡ型糖尿病で、1707人がⅠ型糖尿病であった。Ⅱ型糖尿病の母親達は、黒人系、アジア系、他の少数民族に(Ⅱ型糖尿病48.8%、Ⅰ型糖尿病9.1%)、そして、貧困地域に由来するようだ(最も貧しい5地域ではⅡ型糖尿病46.3%、Ⅰ型糖尿病22.8%)。糖尿病の母親から生まれる赤ちゃんの周産期死亡率は、人口1000対31.8であった。Ⅰ型糖尿病の母親から生まれた赤ちゃんの周産期死亡率は(人口1000対31.7)、Ⅱ型糖尿病の母親から生まれた赤ちゃんの周産期死亡率(人口1000対32.3)に匹敵した。そして、それらは、一般の母親から生まれた赤ちゃんの周産期死亡率と比べると約4倍に相当した。109人の赤ちゃんの中で、141の主要な先天性異常が確認された。糖尿病の母親から生まれる赤ちゃんの主要な先天性異常の有病率は、人口1000対46であった(Ⅰ型糖尿病の母親から生まれた赤ちゃんの周産期死亡率は人口1000対48、Ⅱ型糖尿病の母親から生まれた赤ちゃんの周産期死亡率は人口1000対43であった)その結果は、予想の2倍以上であった。この増加は、神経系の異常、とりわけ神経管の異常と先天性心疾患によって促進された。109人の赤ちゃんの中で、71人(65%)の赤ちゃんの異常が診断された。先天性心疾患は、出生前に42人中23人(54.8%)の胎児に認められた。先天性心疾患以外の異常は、出生前に67人中48人(71.6%)の胎児に認められた。

結論:
周産期死亡率と先天性異常の有病率は、Ⅰ型またはⅡ型糖尿病の母親達から生まれた赤ちゃんの方が高い率である。周産期死亡率と先天性異常の有病率は、糖尿病の2つのタイプの間で差はないようである。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■この調査は医療専門職から取っているため、データは信頼性が高く、Retrospective cohort study であるとえる。

■倫理的には、個人のインフォームドコンセントは行っていないが、通知文でデータを使用することの了解を得ていると思われ、問題はないとえる。

■1型2型糖尿病の分娩数のみでなく、全体の分娩数があると1型2型 糖尿病の分娩数の割合がわかった。

■対象で、20週未満の流産を除外した根拠が明確ではなかった。

■1年間の調査期間中に同じ母親が流産後妊娠し再度流産することも予測され、過大評価となることも考えられる。

■Deprivationについては、「その地域がどの程度他よりも低い位置にいるか」という視点でTable2をみると、経済的に低い地域に2型糖尿病女性が多く存在することがわかる。

■母親の血糖コントール状況としては妊娠13週のHbA1cの結果が示されている。日本のコントロール状況はどうか。5%代維持が目標であるが、妊娠を控える人もいるのではないか。

■この論文では、糖尿病女性が妊娠する際の血糖コントーコントロールの必要性を示唆している。



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