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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2008.02.05

2008年2月5日 担当:小竹、古屋

Seasonality is associated with anxiety and depression:The Hordaland health study
~ シーズナリティは不安と抑うつに関連している:The Hordaland Health Study ~
出典: Journal of Affective Disorders 105 (2008) 147-155
著者:Nicolas M.F. Oyane, Ingvar Bjelland, Stale Pallesen, Fred Holsten, Bjorn Bjorvatn
<論文の要約>
背景:
本研究の目的は、気分と行動における季節変動(シーズナリティ)が、一般住民の抑うつと不安症状に、どのように関連するかを評価し、シーズナリティのアンケート記載月によって、抑うつと不安症状の発症率にどのように影響するかを調査することである。

方法:
対象となった母集団は、The Hordaland郡(ノルウェー)の1953-57年生まれの全住民である(N=29,400)。そのうち男性8598人(回収率57%)と女性9983人(回収率70%)がスクリーニングステーションを訪れた。男性の半分(ランダム選択)と全女性にシーズナリティの項目に記入するアンケートを依頼した。Seasonal Pattern Assessment Questionnaire(SPAQ)の中核要素であるGlobal Seasonality Score(GSS)を用いた。不安と抑うつを測定するためにThe Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を用いた。両アンケートは、男性2980人(68.9%)と女性8074人(80.9%)によって行われた。

結果:
シーズナリティは、アンケートが行われた季節にかかわらず、不安と抑うつの両方に正の関連があった。低/中等度のシーズナリティがある対象は、11月から3月までの抑うつ症状が若干高いレベルであった。

限界:
相当数の非応答者がいた。

結論:
本結果は、シーズナリティが、不安と抑うつの両方に関連している、別の次元の要因である可能性を示唆するものである。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■サンプル、デザインの選択について
⇒男女の調査用紙が違うのは何故か?
結果、男性サンプルは女性の半数以下であり、それが結果に影響することはないのだろうか。
⇒月毎の不安・抑うつのprevalenceを見ればよいのでは?またプロスペクティブに追跡しなければ、因果関係は明確にはならないだろう。
⇒本論文は季節性を論じている。先行文献レビューでは、夏季の精神障害やSADのケースにも触れられており、各対象者の通年のデータ収集をした方がよいのではないか。

■テクニカルタームの使用について
⇒Seasonality(シーズナリティ)とは?
シーズナリティの位置づけが曖昧である。
・季節や気候の変化に対して、誰しも肉体的にも感情的にも反応を示すが、とりわけ強い反応を示す人がいる。この敏感さは、しばしば気分や行動の変化という形をとる(季節依存性)(「Rosenthal:季節性うつ病,講談社現代新書,p.57,1992」)。
・季節性評価尺度(SPAQ):気分、行動等(睡眠時間、社会的活動、気分、体重、食欲、エネルギー水準)のシーズナリティ変化の自覚の程度を評価する。一定地域に継続的に居住した最近3年のことを考えて答える。SADの診断やスクリーニング用具として導入され、集団調査におけるSPAQの使用は、いくつかの研究で妥当性が検証されている。Global Seasonality Score(GSS)はその中核要素である。
⇒Non-seasonal or Seasonalの違いは?
月毎のprevalenceには差がない、シーズナリティが認められなかったのは偶然ではないのか。その結果をNon-seasonalと断定できるのか。果たしてGlobal Seasonality Score(GSS)は、Non-seasonalを測定できる尺度なのか。

■本調査の位置づけについて
⇒本調査実施の意義は何か?
シーズナリティが不安・抑うつを予測することができれば、GSSがその予防のためのスクリーニングツールとして活用可能であることが検証できるだろう。



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