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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2008.4.30

2008年4月30日 担当:下園、田中

A Community Intervention Reduces BMI z-score in Children:Shape Up Somerville First Year Results
~ 小児において地域での介入はBMIz-scoreを下げる:Shape Up Somerville の1年目の結果より ~
出典: Obesity. 2007. 15 (5): 1325-36
著者:Economos CD,Hyatt RR,Goldberg JP,Must A,Naumova EN,Collins JJ,Nelson ME
<論文の要約>
目的:
「環境に対する地域密着型の介入により、低年齢層の小児における体重増加を予防することができる」という仮説を検証すること。(ポピュレーションストラテジーの効果検証)

方法:
■対象:マサチューセッツ州の3都市の小学1~3年生1,178人
■研究デザイン:介入研究(非無作為) 介入群1都市(サマービル)、対照群2都市
■介入期間:8ヶ月(観察期間は1年)
■介入方法:学校に行く前、学校に行っている間や学校が終わってから、あるいは家庭や地域において、身体活動の向上や健康に良い食べ物の利用を増やすことを目指した、主に環境の整備による介入。
介入に参加した関係者及び関係機関は、児童、保護者、教師、学校給食業者、学校に行く前や学校が終わってからの活動、レストラン、マスメディアなど、地域の多くのグループや人々
■メインアウトカム:BMI z-scoreの変化

結果:
ベースライン時点におけるBMIz-scoreが85パーセンタイル以上の子どもの割合は、介入地域と2つの対照地域のそれぞれにおいて、44%(385人)、36%(561人)、43%(232人)であった。共変量で調整すると、介入地域では対象地域の子どもと比較してBMIz-scoreが-0.1005(p=0.001、95%信頼区間:-0.1151,-0.0859)減少していた。

結論:
環境を変化させる地域密着型の介入は、肥満のリスクが高い子どもにおいてBMIz-scoreを低下させた。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■介入の効果について
⇒様々な介入を一度に行なうと、どの介入項目が最も影響していたのかが分からないのではないか?
・個々の介入だけでは効果が十分ではないというネガティブデータがあるのかもしれない。
・そもそも、環境に対する介入が疾病予防に関連があるということを、地域介入研究で示した論文は少なかった。今回の結果を踏まえて、今後詳細な因果関係をテーマにした研究が進むのかもしれない。

■サンプル数について
本来対象者は5940名であったが、最初の同意を得る段階で4244名が脱落している。
⇒脱落者が多いが、これで地域を代表しているといえるのか?
・同意を得られる割合は臨床研究とは異なるのでないか。地域研究では同意が得られにくいのではないか。
・脱落は多いが、それでも最終的には1178名で分析した。サンプル数の観点からみると、統計学的推定が可能な範囲なのではないか?
・元々この研究は非無作為であるため、代表性に関しては、研究デザインの段階での限界と捉えたほうが良いのではないか。

■対象地域1のベースラインの特性が、介入地域と比べて、健康的によくない状態であることについて
⇒健康的である介入地域と、あまり健康的ではない対象地域を比較すると、過小評価になるのではないか?
・これには考え方が2通りある。
 ①意識が高いから、介入に対する反応が良いため、良い結果が出やすい。→ 過大評価
 ②意識が元々高いが故に、介入前後の差はあまり無い可能性がある。→ 過小評価
 今回の場合は、過小評価なのかもしれないが、この論文では分からない。

■DiscussionにTableがあることに対する違和感について
※Table7は、身長が50パーセンタイル、BMIzスコアが75パーセンタイルという児の場合、本研究のような介入を受ければ、BMI等にどのように影響されるのかをシミュレーションしたときのデータである。
⇒なぜこういった形でDiscussionにTableを出しているのか?
・臨床研究では殆ど見られない形式。しかし、本研究を、政策科学としての研究と考えるならば、シミュレーションが出来るということは、根拠を示すことが出来るため、重要であると思われる。
つまり、この研究がどこにフォーカスしているかによっては、本研究のような例外的なスタイルも良いのではないか。







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