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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2008.6.18

2008年6月18日 担当:依田

A One-Year Randomized Controlled Psychosocial Intervention Study Among Family Carers of Dementia Patients-Effects on Patients and Carers
~ 認知症患者の家族介護者への1年間の心理社会的介入無作為化比較試験が患者と介護者に与える影響 ~
出典: Dementia and Geriatric Cognitive Disorders 2007;24:469-475
著者:Ingun D.Ulstein;Leiv Sandvik;Torgeir Bruun Wyller;Knut Engedal
<論文の要約>
目的:
認知症患者の家族介護者への短期間の心理的介入プログラムの効果と、ポジティブな反応を示す患者と介護者の特性を確認する。

方法:
この研究は、多施設の無作為化比較試験である。老人及び精神医学分野の7つの記憶クリニックから募集した180人の認知症患者の介護者が、研究に参加した。介入群の介護者は認知症について教育され、そして6つのグループミーティングで、構造化された問題解決の使い方を教えられていた。対照群は、通常の治療を受けた。患者への影響は、神経精神医学的項目(NPI)で、介護者への影響は、親族ストレススケール(RSS)で測定された。

結果:
治療効果意図分析は、171組の患者と介護者が含まれていた。介入では、主要なアウトカム変数への影響はみられなかった。しかし、4.5ヶ月の後、対照群のより多くの介護者が、低い負担グループから中程度あるいは高い負担グループへ転換した。サブグループの分析では、女性患者の介入群で促進されたNPIスコアで、統計的有意差が明らかになった。

結論:
この研究における圧倒的にネガティブな結果は、介護者のために個別的につくられた介入の必要性と、グループベースの介入が行われる時は、性別と続柄と同様に狭い負担範囲基準の活用を強調している。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■ノルウェイは、スウェーデンなどと同様に福祉大国であると聞いているが、認知症の人を在宅で家族が介護していることが多いというのは、意外である。

■研究は、内的妥当性を見ることが主目的ではあるが、この対象となる人は、何人くらいいたのか、この研究期間に何人に参加を呼びかけた上での180人の参加同意であったのかなどの外的妥当性がわかる内容も入れておく方が、より明確になるのではないか。

■研究目的、研究方法、サンプルサイズの決定や無作為割付の方法、分析方法などの記述は、とてもわかりやすい。しかし、目的が、介入の効果をみることであるにも関わらず、サブグループ分析もしている。ネガティブな結果ではあったが、当初の目的からすると、介入方法や期間などの、介入効果に関する考察をメインにした方が良かったのではないか。サブグループ分析をすることで、むしろ、当初の目的が曖昧になる。

■対象の性差を当初から考慮しての研究であれば、Introductionにその根拠を明示し、研究デザインも検討すべきである。







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