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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2008年10月8日 担当:丸山

Birth Weight, Postnatal Growth, and Risk for High Blood Pressure at 7 Years of Age: Results From the Collaborative Perinatal Project
~ 出生時体重、出生後の成長と7歳時における高血圧のリスク:周産期共同研究プロジェクトからの結果 ~
出典: PEDIATRICS Vol. 119 No. 6 June 2007, pp. e1264-e1270 (doi:10.1542/peds.2005-2486)
著者:Anusha H. Hemachandra, MD, MPHa,b, Penelope P. Howards, PhDa, Susan L. Furth, MD, PhDc,d and Mark A. Klebanoff, MD, MPHa
<論文の要約>
目的:
高血圧の生理的な素因は、子宮内発育遅延に続いた急速なcatch-up growthの結果であると考えられる。この研究の目的は、子どもの高血圧におけるリスクとしての、出生体重とその後の体重増加の影響を評価することと、高血圧の進展に対するリスク増加における、子宮内発育遅延を伴う子どものcatch-up growthの時期を確認することである。

方法:
米国周産期共同研究プロジェクト(1959-1974)は、合衆国の12のメディカル・センターにおいて55,908人の妊婦群を研究し、7歳まで子どもを追跡した。この期間に生まれて、腎臓・心臓病がなく追跡が完了した白人・黒人の全ての子どもについてposthoc解析を行なった。zスコアは、出生時体重、4カ月、1歳、4歳、7歳時の平均とSDから算出した。zスコアの変動を各間隔で算出した。

結果:
人種とそれ以降のzスコアの変動を同時に投入した回帰モデルにより算出すると、出生体重が1kg増加するごとに、オッズ比は、拡張期高血圧で2.19、収縮期高血圧1.82となった。それぞれの時期におけるzスコアが1増加することにより、出生時と4ヶ月で1.65、4ヶ月と1歳で1.79、1歳と4歳で1.71、4歳と7歳で1.94と、7歳における拡張期高血圧のオッズ比が上昇した。白人は拡張期高血圧のオッズ比が1.51であった。

結論:
合衆国における大きな2人種群では、SGA児の7歳時での高血圧のリスクの上昇はなかった。しかし、幼少期の早期に体重のパーセンタイルが上昇した子どもは、高血圧のリスクが上昇することが認められた。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■方法について
・合衆国の12の大学病院の妊婦を対象としており、対象者にハイリスクなどの偏りがあるのではないか。
・対象者の中で少数であった、スペイン人、アジア人、他民族の女性は除外されたが、除外せずに分析の際に人種で調整すればよいのではないか。
⇒人種を階層化するには人数が少なかったのかもしれない。
・高血圧の定義が明確でない。本研究対象者の90パーセンタイル以上を高血圧としたのか、国際基準を用いたのかが不明である。

■結果について
・出生体重が1kg増加するごとに、リスクが増加するという結果を示しているが、出生体重と高血圧のリスクは、直線的に増加するのだろうか?小さい子どもや大きい子どもにおいてリスクが増加すると考えると、カテゴリー化して解析すべきでは?
・表2について、相関係数が0.04~0.49と低いが、P値はP<0.01である。この場合、相関係数がゼロであるという帰無仮説が棄却されただけであるため、有意な相関があるとはいえない。相関の場合は、相関係数をみて判断しなければならない。
・ここでは、相関がないと結論付けているが、出生体重が小さいと4カ月までの体重増加が大きいこと、そして7歳のBMIと4歳から7歳までの体重増加に相関が認められることは、早期の体重増加、またその後の体重増加がどのような背景により起こるか、またその後どのような意味をもつのかを考えると大変興味深い。

■考察について
・モデルの中に7歳時のBMIを含まなかったことは、出生体重と7歳児の血圧と相関の強い7歳時のBMIを含むことにより、出生時体重と血圧のPathwayがわかりづらくなってしまうことを避けるためだと考えられる。これまでの研究で示されている、SGAや低出生体重児と高血圧との関連が認められなかったことは、このようなモデルを用いたことによると考えられた。







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