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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2008.12.3

2008年12月3日 担当:古屋

Health Literacy and Mortality Among Elderly Persons
~ 高齢者における健康に関するリテラシーと死亡率 ~
出典: Arch Intern Med. 2007;167(14):1503-1509.
著者:David W. Baker, MD, MPH; Michael S. Wolf, PhD, MPH; Joseph Feinglass, PhD; Jason A. Thompson, BA; Julie A. Gazmararian, PhD; Jenny Huang, PhD
<論文の要約>
背景:
健康に関するリテラシーの低い人は、健康に関する知識が少なく、慢性疾患に対しての自己管理が乏しく、予防に関してのサービスをあまり利用できず、横断研究においては健康状態が悪い。本研究では、低いリテラシーレベルが独立して、すべての、あるいは特定の死因を予測しているかどうかを検討した。

方法:
アメリカの4つの大都市圏における、3260人のMedicareを利用している人を対象に、1997年に以下の項目をインタビューによって調査した。調査項目は人口学的な背景、慢性疾患の状況、身体的、精神的健康度についての自己評価、健康行動についてであった。参加者は併せて、短縮版のTest of Functional Health Literacy in Adultsに回答した。メインアウトカムは全死因と、特定の疾患(心血管系、がん、その他)の死亡率であり、それらは2003年のNational Death Indexによる。

結果:
リテラシーレベルによる参加者の粗死亡率は、適切(2094人)18.9%、境界域(366人)28.7%、不適切(800人)39.4%であった(p<0.001)。人口学的、社会経済学的状況とベースラインにおける健康状態で調整したところ、全死因の死亡率に対するハザード比は、適切な人と比較して、不適切なレベルの人で1.52(95%信頼区間、1.26-1.83)、境界域の人で1.13(95%信頼区間、0.90-1.41)となっていた。対照的に通学年数は単変数による解析で死亡率と負の関連が認められたが、多変量モデルでは有意ではなかった。不適切な健康リテラシーレベルの参加者は、心血管系の死亡について、調整後もリスクとなっていたが、がんについての死亡では、リスクとなっていなかった。

結論:
地域に住む高齢者において、読解の流暢さによって測定された適切でない健康リテラシーは、独立して、全死因の死亡率と、心血管系の死亡率に対する予測因子となっていた。流暢さは、社会経済的状況と健康との関連を検討する際に、教育よりも検出力が高い変数である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>

■研究デザインについて
⇒アウトカムである'死亡'の確認にNational Death Indexを使用。
National Death Indexは、参加者の姓と名前、社会保障番号、出生年月日をマッチさせることで、正確な情報を、確実に得ることができる。つまり、追跡率がほぼ100%に近いものと考えられる。本研究は、アウトカム指標の設定をNational Death Indexによる死亡としており、測定の完全性が担保されている点が、研究デザインとして優れている。

■研究対象者について
⇒65歳以上の全メディケア新規加入者が対象。
全対象数のうち、選定基準に見合う研究への参加者は、約半数である点や対象者が65歳以上に限られた点から、サンプルの代表性、一般化可能性には限界がある。

■テクニカルタームの使用について
⇒"Health Literacy"
論文中、"Reading fluency"、"Reading comprehension"などのタームが多用されているが、"Health Literacy"の定義がなされていない。本研究では、"Health Literacy"の測定には、Test of Functional Health Literacy in Adults(S-TOFHLA)が用いられているが、それも、健康に関するリテラシーの包括的尺度ではないと述べている。
質問紙を見ても、リテラシーというよりも国語の問題、といった感じの部分もあった(穴埋め問題)。ただし、薬瓶のラベルや、病院の表示などを見て、その内容について答えるような問題は、リテラシーをよく反映しているものかもしれない。







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