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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2008年12月10日 担当:西村

Long-Term Effect of Diabetes and Its Treatment on Cognitive Function
~ 糖尿病とその治療の長期影響と認知機能 ~
出典: N Engl J Med 2007;356:1842-52.
著者:The Diabetes Control and Complications Trial/Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications (DCCT/EDIC) Study Research Group*
<論文の要約>
背景:
1型糖尿病患者の血糖レベルを、健常者の値に近い状態にする長期的な治療計画によって、認知機能に関する影響が増加し、また重症低血糖の危険性が増加した。認知機能に対する影響に、以前からの治療法と、新たなこの治療法の間で違いがあるかどうかを検討することを目的とした。

方法:
DCCTと、そのフォローアップを行ったEDIC調査において登録された1型糖尿病患者1144名を対象とし、DCTT(平均年齢27歳)の参加者と、平均18年後に一連の総合的認知テストを行った。フォローアップが終了するまで、糖化ヘモグロビンレベルは測定され、危険な低血糖の頻度は、昏睡またはけいれん発作により記録された。我々は、認知機能測定のために、平均糖化ヘモグロビン値と低血糖出現頻度を測定し、ベースラインの年齢、性、教育を受けた年齢、フォローアップ期間、視力、自己報告による末梢神経障害、そして(コントロールのために実行された治療効果)DCCTが開始されてから行われた認知テストの数を調整し、元のDCCT治療グループにおける、以前からの治療法と、新たな治療法における治療効果の差を評価した。

結果:
対象者の40%に少なくとも1回の低血糖昏睡または痙攣があった。認知機能の低下に関して、重症低血糖頻度や、治療法の違いは有意に影響していなかった。より高い糖化ヘモグロビン値は運動速度(P = 0.001)と精神運動能力(P=0.001)の穏やかな低下と関係していた。しかし、他の認知領域については影響がなかった。

考察:
1型糖尿病者について、平均18年間の追跡の結果、重症低血糖は頻発していたが、長期にわたる認知機能低下についての重要な根拠は見つけられなかった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>

■Introductionの内容がわかりにくい
The Diabetes Control and Complications Trial/Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications (DCCT/EDIC) Study は、糖尿病の研究では大変良く知られている研究であるが、そのためか、DCCTおよびEDICについての説明が十分で、 糖尿病を専門とする人以外が読むと理解しにくい内容である。また、研究目的が理解しにくくもっと丁寧に書いてほしい。

■1回の認知機能テストに要する時間が4~5時間を要したというのは問題ではないか。
研究が開始された時期が1983年であり、時代背景もあると思われる。最近の知能検査では、このような方法は用いられない。

■治療法について従来法と強化法を比較して、認知機能への影響を調査しているが、従来法が、認知機能に及ぼす影響(高血糖による脳への影響)についての担保がされていない。
実験データなど、高血糖が脳へ及ぼす影響など示したうえで2群の比較をする必要がある。







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