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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2009年2月18日 担当:依田

Befriending carers of people with dementia: randomised controlled trial
~ 認知症を持つ人の介護者への友好的支援:RCT~
出典: BMJ 2008;336;1295-1297
著者:Georgina Charlesworth, Lee Shepstone, Edward Wilson, Shirley Reynolds,Miranda Mugford, David Price, Ian Harvey and Fiona Poland
<論文の要約>
目的:
認知症を持つ人の家族介護者の、心理的健康とQOLを改善する友好的支援計画の有効性を検証する。

方法:
初発進行性認知症を持つ人々の家族介護者236人を対象とし、通常ケアを受けている対象をコントロール群、通常のケアに友好的支援を加えた介入群において、無作為化比較試験(一重盲検法RCT)を行った。
地域は、イーストアングリア及びロンドン行政区に設定した。期間は、2002年4月~2004年7月である。介入方法は、友好的支援のファシリテーターが介護者にボランティアをペアリングすることをコーディネートし、ボランティアが、6ヶ月間、毎週、介護者の自宅を訪問し、介護者との交流と会話や聴き手になる友好的支援を行なうことである。
主要なエンドポイントは、HADSのうつスケールによる介護者の健康状態、副次的なエンドポイントは、健康関連QOL(EuroQOL)、HADSの不安スケールによる健康状態、肯定感(PANAS)、孤独感、自覚しているソーシャルサポート(MSPSS)である。
ベースラインのデータと無作為化後の6ヶ月、15ヶ月、24ヶ月のデータを収集した。
解析方法は、両群間のt検定を行い、血縁関係と人口密度による層化と一般線形モデルを用いたベースラインの得点の調整を行い、最小二乗法によって調整を行った平均値の差を検討した。

結果:
最も多い参加者は、白人、女性、退職年齢より年配、通常認知症の人と夫婦で生活している人であった。ほとんどの人が、日々の援助を提供されていた。介護者の平均年齢は68歳(範囲は36歳~91歳)であり、平均介護期間は4年弱であった。認知症の人の平均年齢は、78歳であった。5人の介護者(17%)は、臨床的なうつのレベル(HADSうつ得点11以下)に達していた。ITT(The intention to treat analysis)では、主要なエンドポイント、副次的なエンドポイントとも、いずれの時点においても介入の効果は見いだせなかった。
プロトコルを完了したサブグループ分析では、15ヶ月時点で、両群間にボーダーラインの有意差を示した。配偶者のみのサブグループ分析では、介入群とコントロール群で統計的な有意差はなかった。

結論:
友好的支援計画はすべての介護者に利用される訳ではなく、友好的支援計画へのアクセスを提供することは、介護者の健康の改善に効果的とはいえない。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>

■この研究には、試験IDが記されている。RCTの場合、研究開始前に、この登録を行うことが必要である。日本においてのこの登録は、UMIN臨床試験登録システムで行う。

■INTRODUCTIONに、ケアのコスト(BECCA)についても述べるという記述があるが、この論文には記されていない。おそらく、BECCAについては、他の論文にまとめられており、それも含めて表現されていると考えられる。

■参加者は、初発の進行性認知症を持つ人の介護者であり、被介護者の状況や介護期間などの介護状況の条件をそろえることが難しい。同じ条件の人が集まった段階で割り付けが行われるが、n数の少なさは、結果に影響する。

■歴史的にボランティア活動が行われている地域において、この研究はさらに、友好的支援のファシリテーターを介しての意図的なボランティアの介入(1週間に1度のボランティアと介護者との交流を6ヶ月間行う)を行っているが、その意義は何かが不明確である。また、最終的に、この介入を受け続けた対象者が37人であったことから、介入方法にも課題が残る。違う地域で行うと、また結果が異なる可能性がある。

■サンプルサイズの計算のところの最後の一文に、参加者の脱落数と最終参加人数が記されているが、これは結果である。







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