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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2008.2.13

2009年7月1日 担当:井川

Family Focused Grief Therapy: A Randomized, Controlled Trial in Palliative Care and Bereavement 
~ 家族に焦点を当てたグリーフ・セラピー:パリアティブ・ケアと死別におけるRCT ~
出典: Am L Psychiatry 2006;163:1208-1218
著者: David W.Kissane,Maria McKenzie,Sidney Bloch,Chaya,Moskowitz,Dean P.McKenzie,Imogen O'Neill
<論文の要約>
目的:
家族に行うグリーフ・セラピーの目的は、心理社会的にリスクのある家族の、悲嘆による病的な影響を減らすことである。末期患者に対するパリアティブ・ケアから死別まで続く。

方法:
Family Relationships Indexを使用して、癌で亡くなる患者の家族257をスクリーニングした。そのうち 183 (71%)家族はリスク状態にあり、その中の81(44%)家族が、調査に参加した。 その家族を、ランダムに (2:1比で)グリーフセラピーを受ける集団(53家族、233人)とコントロール群(28家族、130人)に分けた。患者の死をベースラインとして、6ヶ月後、13カ月後に調査(判定)した。primary measuresとしてBrief Symptom Inventory(BSI)(不安の心理社会的要因/簡易症状評価尺度)、べックのうつ病尺度Depression Inventory(BDI)、Social Adjustment Scale(SAS/社会適応尺度)を用いて測定を行った。 secondary measureとしてFamily Assessment Device(FAD/家族機能評価尺度)での測定を行った。

結果:
家族へのグリーフ・セラピーの効果は、全体的には患者の死後13カ月に家族の悲嘆が減ると経度であったが、もともとベースライン時のBSIやBDI得点が高い家族の悲嘆やうつ状態は、顕著に改善された。家族機能のタイプごとに見ると敵対的(Hostile)な家族のうつ状態は変わらなかったが、中間的(Intermediate)および無関心(Sullen)な家族は、改善する傾向があった。

結論:
グリーフ・セラピーは、病的な悲嘆を防ぐ可能性がある。 特に中間的(Intermediate)および無関心(Sullen)な家族にとっての効果は明確である。また敵対的(Hostile)な家族に対しては、家族間の衝突を増加させないためのケアが必要である。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■ターミナル・ケアの質の向上に資する知見。家族内の人間関係によって、介入の効果が違うというのは納得できるし面白い。

■結果からは、中間的(Intermediate)家族の改善が見られたとまでははっきり言えないのではないか。

■心理学にはいろんな尺度がある。妥当性・信頼性・一般化可能性を確認しつつ、利用していきたい。

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