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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2009.7.8

2009年7月8日 担当:下園

Comparison of Strategies for Sustaining Weight Loss
The Weight Loss Maintenance Randomized Controlled Trial
~ 体重減少を維持する方法の比較
                                体重減少を維持させる方法の無作為化比較研究 ~
出典: JAMA  Vol.299 No.10,March 12,2008
著者: Laura P. Svetkey, MD 他
<論文の要約>
背景:
体重減少の行動変容は短期間の介入で達成する。しかし、一般的にリバウンドする。

目的:
2つの体重減少を維持する介入方法を比較する。自己管理の群をコントロールとする。

研究デザインと対象者:
2つのフェーズの研究を実施した。対象者は1032人で、過体重又は高血圧症と脂質異常症の片方又は両方に罹患している肥満患者(アフリカ系アメリカ人38%、女性63%)で、体重が少なくとも4kg減少する6ヶ月間のプログラムに参加した人である(第1フェーズ)。更に体重減少を維持する介入を無作為で実施した(第2フェーズ)。4ヶ所のアカデミックセンターにおいて、2003年8月から2004年7月の間で登録を受け付け、2004年2月から12月の間で無作為に割り付けた。データは2007年6月に完全にそろった。

介入方法:
第1フェーズの体重減少プログラムを実施後、参加者を30ヶ月のフォローグループに割り付けた。割り付けは、1ヵ月毎に面接によるケアをする群、アクセスに時間的制限のない双方向の情報テクノロジーベースのケアを実施する群、そして自己管理の群とした。

メインアウトカム:
ランダム化による体重変動

結果:
エントリー時の体重の平均値は96.7kgであった。最初の6ヶ月のプログラムでは、減少した体重の平均値は8.5kgだった。ランダム化後に体重のリバウンドがあった。面接群の参加者は自己管理群に比べて体重リバウンドが少なかった(リバウンドした体重:面接郡4.0kg、自己管理群5.5kg。30ヶ月時点での差:差の平均値-1.5kg、95%[Cl-2.4~-0.6kg;P=0.001)。30ヵ月後、体重のリバウンドは、テクノロジーベース群と自己管理群で差はなかった(テクノロジーベース群5.2kg、自己管理群5.5kg、差:平均値-0.3kg;95%Cl-1.2~0.6kg、P=0.51)。しかし、体重のリバウンドは、18ヶ月時点と24ヶ月時点で自己管理群よりテクノロジーベース群のほうが少なかった(<18ヶ月時点の差>平均値-1.1kg、95%Cl-1.9~-0.4kg、P=0.003、<24ヶ月時点の差>平均値-0.9kg、95%Cl-1.7~-0.02kg、P=0.04)。30ヶ月後、面接群とテクノロジーベース群の差は-1.2kg(95%Cl-2.1~-0.3、P=0.008)であった。性、人種、年齢とBMIによるサブグループでは有意な差は認められなかった。全数では、研究参加者の71%で登録時から減少した体重を維持していた。

結語:
大多数の参加者は、最初の体重減少の行動変容プログラムによって参加前より体重が減少した。月毎の面接による状況確認は、体重減少において少ないが利益をもたらす。これに対して、テクノロジーベースによる双方向介入の効果は、早い段階で効果があったが一時的であった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■ICTを用いた生活習慣病介入の研究は最近たくさん見られる。これは「減った体重の維持」を狙いとしており、また長期にわたり追跡しており興味深い。

■本研究対象者はITが利用できる人に限定される。つまり、IT活用できる人に対する効果をみる研究

■死亡が3人いた。研究参加と関連があるか?対象者としては運動のハイリスク者を除外しており、また、運動を各自で実施していたためか関与は限定的と思われるが、一般的に介入研究の際に注意すべき部分。

■フェーズ2の対象者の条件をフェーズ1で4kg減少した人とし、それ以上減少した人を対象外としているが、なぜ4kgをカットオフ値としたのかが不明。

■集団の特性(地域など)によって効果が出にくい場合もあろう。

■一人を長期にフォローする場合、IT活用により一人当たりのコストが安価になるため、様々な分野において活用できるのではないか。



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