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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2008.9.16

2009年9月16日 担当:須田

Differential Gender Response to Respiratory Infections and to the Protective Effect of Breast Milk in Preterm Infants
~ 早産児における呼吸器感染症に対する母乳の予防効果に性差による違いはあるか ~
出典: Pediatrics 2008;121:1510-1516
著者: M. Ines Klein, MDa, Eduardo Bergel, PhDb,c, Luz Gibbons, PhDb; et.al
<論文の要約>
背景:
超低出生体重児(1000g未満)は、重症なウイルス性肺疾患に対してハイリスクである。乳児の重症急性呼吸器感染症に対する母乳の予防的な効果は、すでに証明されているが、早産児において、そのメカニズムは明らかになっていない。

目的:
ハイリスクにある乳児の間で、重症急性肺疾患に関する母乳の予防効果が、女児と男児では異なるかどうかを明らかにすること。

方法:
2003年6月1日から2005年5月31日の間に、アルゼンチンにある2つのNICUに入院中の肺疾患にかかりやすい乳幼児の両親に研究協力を依頼し、前向きコホート研究を行った。研究に参加している子供達は、月1回、病院での診察を受けてもらい、両親は、2週間毎に呼吸状態の変化を確認するために質問紙を用いて小児科医と電話連絡をとりあった。この研究のメインアウトカムは、再入院であり、第2アウトカムは、診察毎の呼吸器の状態変化をスコア化したものである。

結果:
研究に参加したのは、119人の超低出生体重児で、このうち88人の乳児が軽い呼吸器感染症に感染し、33人が再入院を必要とした。再入院に対して、母乳育児は、男児RR:2.46(95%CI:0.44-13.88)ではなく女児RR:0.05(95%CI:0.01-0.37)に予防効果が認められた。また、母乳育児を行っていない男児より、母乳育児を行っていない女児の方が再入院の割合が有意に高かった。母乳育児と性別の間の関係は、急性肺疾患の重症度に影響を与えることができるような変数を調整した後でさえも、臨床的に、そして統計的に意味があった。

結論:
重症急性肺疾患に対する母乳の予防効果は、女児において特に強く見られた。そして、母乳を与えられていない女児は、重症呼吸器疾患に対してハイリスクであり、特別な配慮が必要である。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■ABSTRACTが判りにくい

■研究デザインについての説明不足。サンプルサイズは小さいが、very low birth weightの児を100人以上集められたというところに、この研究の価値があるのか?

■信頼区間がかなり大きいにもかかわらず、強く結論付けている。同意しかねる。

■早産しやすいのは、男児と女児のどちらであるか?→男児である。理由は、Y染色体が伸びることにより、妊娠末期になるとお腹の中で急激に体重が増加するからである。このように、もともとのバイオロジカルメカニズムの違いに注目してみることも大切だろう。



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