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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2009.9.30

2009年9月30日 担当:鈴木

Good Semen Quality and Life Expectancy: A Cohort Study of 43,277 Men
~ 良好な精液所見と寿命との関連:43,277人の男性コホート研究 ~
出典: Am J Epidemiol 2009;170:559-565
著者: Tina Kold Jensen, Rune Jacobsen, Kaare Christensen, Niels Christian Nielsen, and Erik Bostofte
<論文の要約>
目的:
妊孕性がその後の死亡と関連していると言われているが、精液所見が死亡率に与える影響を検討した研究はない。本研究では1963年から2001年にかけて、50,000人の男性を対象とし、デンマークの市民登録システムにより死亡率と妊孕性の情報を得た。このことにより、精液所見と引き続く死亡率について、妊孕性を考慮にいれ、精液所見がその後の死亡率を予測する、という仮説によって研究を行った。

方法:
家庭医と泌尿器科医によって1963年から2001年に行われたコペンハーゲン精子分析研究は、個人特有のIDを用いて、Danish central registersというデンマーク人のがん死亡、死因、子どもの数という情報を含むデータと連結された。参加者は2001年12月31日まで、あるいは死亡か追跡不能か、どちらか先に起きるまで追跡され、全死亡率、死因毎の死亡率が、年齢調整された全デンマーク男性と、精液所見を考慮に入れて比較された。

結果:
ダイエットを継続成功者は1年目で95.4%、2年目で84.6%であった。地中海式ダイエットグループでは、食物繊維を大量に摂取し、単不飽和脂肪酸の割合が最も高かった無精子症を除く43,277人の何らかの不妊に関する問題をもつ参加者において、精子濃度が閾値である4000万/mlまで増加するにつれ、死亡率が低下した。運動率と正常な形の精子の割合、精液量が増加すると、死亡率は容量依存性に低下した。よい精液所見を有する男性における死亡率の低下は、さまざまな疾患の減少によるものであり、子どもを持っている、持っていない両方の男性において観察された。

結論:
死亡率の低下は、生活スタイルや社会的因子のみにより説明されるものではないだろう。それゆえ、精液の質は男性の健康全般についての基礎的なバイオマーカーとなりうる。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■どうしてポワソン回帰モデルを使ったのか?比例ハザード性がなかったのだろうか?

■不妊症・無精子症やそれ以外の疾患についての遺伝性はあるのだろうか?ただ、体外受精や人工授精といった技術が確立していない、あるいは一般的でない時代に、精子所見が悪かった場合には、子どもが生まれることは極めてまれであり、遺伝性を見出すことは難しいかもしれない。

■同様に、不妊治療があまり一般的でなかった研究期間の初期には、検査に参加した人もあまり多くないかもしれない。つまり、期間により参加者数に偏りがある可能性があるが、本文中で言及されていない。

■原因と、マーカーであるということは異なるという理解が必要。

■精液所見を改善することは一般的には難しいので、今回の結果を元に公衆衛生学的に介入していくことは難しいだろう。


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