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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2009.11.4

2009年11月4日 担当:芳我

Effects of Breastfeeding on Trajectories of Body Fat and BMI throughout Childhood
~ 小児期の体脂肪とBMIのトラジェクトリに対する母乳の影響~
出典: Obesity 16(2), 389-395, 2008
著者: Anette E. Buyken et al.
<論文の要約>
目的:
健康に問題のない子どもを対象とし、小児期における体脂肪率(%BF)とBMIのSDスコアの推移に対する母乳栄養の影響を男女別に明らかにすること。

方法・手順:
ドルトムントの栄養・身体状況コホート調査(DONALD)を用い、1984年から1999年に出生した男児219名、女児215名を対象とし、生後6か月から7歳までの期間、繰り返し測定した身体計測値および授乳期間をデータとした。

結果:
交絡因子として出生時の状況・社会経済状況で調整した分析の結果、人工栄養あるいは短期母乳(授乳期間が17週以下)の男児の%BFは、標準体重の母の子どもでは年齢とともに減少する傾向が認められたのに対し、過体重の母では減少しなかった。一方、完全母乳(授乳期間17週以上)の男児では、母親の過体重の有無に関わらず%BFが減少する傾向が認められた(過体重の母親の場合に、人工栄養/短期母乳栄養に対し、完全母乳栄養の男児は、1年に0.46%マイナス、有意確率0.01)。また、BMIのSDスコアの推移に対する、母親の過体重と授乳期間の交互作用が認められた。サブグループ分析の結果、女児及び母親標準体重の男児では母乳栄養はほとんど影響を与えなかった。

結論:
母乳が過体重の母親をもつ男児における体脂肪の推移に対する胎生期のプログラミングの影響をが、母乳によって相殺される可能性が示唆した。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■前向きコホート研究として授乳状況(栄養形態)をデータ収集し、対象児の体脂肪率およびBMIの推移を見て影響を検討している(おそらく)初めての研究であり、内的妥当性は確保されている。

■サンプルサイズの少なさと選択バイアスの可能性が限界か。外的妥当性を検討する必要性が考察されている。

■今後、他地域でも同様の結果が認められるかが課題であろう。


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