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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2010.1.27

2010年1月27日 担当:高岸

Intensive Blood Glucose Control and Vascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes
~ 2型糖尿病患者における強化血糖コントロールと血管系転帰の関連 ~
出典: N Engl J Med 2008; 358 : 2560 - 72 : Original Article
著者: The ADVANCE Collaborative Group
<論文の要約>
背景:
2型糖尿病患者において、血管系の合併症やそのことに関連した死亡は多い。縦断研究で、血糖と糖化ヘモグロビン値、それらと主要大血管イベントのリスクとの関連性を示した研究もいくつかある。しかし、ランダム化比較試験のデザインで強化血糖コントロールと血管系の転帰との関連は示されていない。ガイドラインでは目標とする糖化ヘモグロビン値は7.0%以下であるとされている。ADVANCE(The Action in Diabetes and Vascular Disease: Preterax and Diamicron Modified Release Cntrolled Evaluation )臨床試験は、2型糖尿病患者において、主要大血管イベントの頻度をアウトカムとし、糖化ヘモグロビン値を6.5%以下に設定した群とそうでない群の2群に分けた。

方法:
ADVANCEでは、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の20の国で215の協力施設で行なった。研究方法は事前に必要項目を公開し、参加者への同意はそれぞれのセンターで行なった。
2型糖尿病患者の30歳以上50歳未満で、研究参加時に主要大血管イベントや細小血管イベントの既往がないものを集めた。糖化ヘモグロビン値に関連した外的・内的基準は設けなかった。除外基準は、この治療が禁忌になる場合と研究参加時に長期のインスリン療法をしている場合とした。 11,140 人を標準的な血糖コントロールを受ける群と強化血糖コントロールを受ける群に無作為に割り付けた。強化血糖コントロール療法は、糖化ヘモグロビン値が 6.5%以下になるように、グリクラジドと必要に応じてその他の薬剤を投与した。主要エンドポイントは、主要大血管イベント(心血管系の原因による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)と主要細小血管イベント(腎症、網膜症の発現・悪化)の複合とし、両イベントの合同評価と個別評価を行った。

結果:
中央値で5年のフォローアップ後の糖化ヘモグロビンの平均値は、強化コントロール群(6.5%)のほうが標準コントロール群(7.3%)よりも低かった。強化コントロールにより、主要大血管イベントと主要細小血管イベントの複合発生率が低下した(18.1%,これに対し標準コントロール群 20.0%;ハザード比 0.90;95%信頼区間 [CI] 0.82~0.98;P=0.01)。同様に,主要細小血管イベントの発生率も低下した(9.4% 対 10.9%,ハザード比 0.86,95% CI 0.77~0.97,P=0.01)。この低下は主に腎症の発生率が低下したことによるものであり(4.1% 対 5.2%,ハザード比 0.79,95% CI 0.66~0.93,P=0.006)、網膜症に対しては有意な効果はみられなかった(P=0.50)。 主要大血管イベント(強化コントロール群のハザード比 0.94,95% CI 0.84~1.06,P=0.32),心血管系の原因による死亡(強化コントロール群のハザード比 0.88,95% CI 0.74~1.04,P=0.12),全死因死亡(強化コントロール群のハザード比 0.93,95% CI 0.83~1.06,P=0.28)に対しては,血糖コントロールの違いによる有意な影響はみられなかった。重症の低血糖はまれであったが、発生率は強化コントロール群のほうが高かった(2.7%,これに対し標準コントロール群 1.5%;ハザード比 1.86;95% CI 1.42~2.40;P<0.001)。

考察:
グリクラジドと必要に応じてその他の薬剤を投与する強化血糖コントロールにより、糖化ヘモグロビン値は 6.5%に低下し、主要大血管イベントと主要細小血管イベントの複合転帰に 10%の相対的低下がみられた。複合転帰の相対的な低下は主に、腎症が相対的に 21%低下したことに起因するものであった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■割り付け手順は明快で妥当性高く両群のバランスもよい。

■複合的な結果では明らかにならなかった部分を小項目に分けて解析したところ腎症の部分で有意差がはっきりみられた。サブ解析はこういう場合に補助的に有用である。

■生存曲線をみると、時間をかけて血糖値を下げていることが分かった。急激に下げると死亡数などが増加してしまう危険もあり、時間をかけたことがよかったのか?


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