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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2010.4.28

2010年4月28日 担当:下園・古屋

Educational inequalities in mortality over four decades in Norway: prospective study of middle aged men and women followed for cause specific mortality, 1960-2000.
~ ノルウェーにおける40年にわたる死亡率の教育格差:1960~2000年の中年期男女の追跡死因別死亡率の前向き研究 ~
出典: BMJ. (2010),Volume: 340, Issue: feb23 2, Pages: c654
著者: B. H. Strand, E.-K. Groholt, O. a. Steingrimsdottir, T. Blakely, S. Graff-Iversen, O. Naess
<論文の要約>
目的:
1960-2000年までに、ノルウェーにおける死亡率に関する教育格差は広がったか、そして、どの死因がこの格差の主たる原因であったかを同定すること。

方法:
全国の代表的な前向きコホート(悉皆調査)。1960年、1970年、1980年、1990年の各時点で45-64歳だった人の4コホートの死亡率を10年間追跡した。対象者は359,547名の死亡、観察人年は、32,904,589人年。主なアウトカム測定は、死亡率と死亡の全原因は、肺、気管または気管支の癌;その他の癌;心血管疾患;自殺;外的原因;慢性呼吸器疾患;その他の原因のカテゴリーに分けた。絶対的あるいは相対的な格差の指標を学歴レベル(基礎/中等/高等)による死亡率の違いを示すために用いた。

結果:
死亡率は、すべての学歴グループにおいて、1960年代から1990年代まで低下した。同時に、死亡率の最も高い、低学歴グループの成人の割合は激減した。死亡率は、高学歴グループで、より低下したために格差が広がった。低学歴グループから高学歴グループを引いた死亡率の絶対的格差は、男性で2倍に、女性では1/3倍増加した。これは、男性で105%、女性で32%の格差のスロープインデックスの増加に等しい。相対的なスケールの格差は、男性で1.33から2.24(P=0.01)へ、そして、女性で1.52から2.19(P=0.05)まで広がった。絶対的格差は、男性で、主に心血管疾患、肺癌、慢性呼吸器疾患の結果として増加した。女性では、主に肺癌と慢性呼吸器疾患によるものであった。男性とは異なり女性では、心血管原因による死亡の絶対的格差が狭くなった。慢性呼吸器疾患は、男性より女性の格差における相違に、より大きく寄与していた。

結論:
すべての学歴グループは、死亡率の低下を示した。
しかし、ノルウェーの福祉モデルが平等主義のイデオロギーに基づいているという事実にもかかわらず、ノルウェーの中年期の死亡率における教育格差は、実質的に、1960-2000年の間に拡大している。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■Blakelyらがニュージーランドでのデータで行ったセンサスと死亡登録データのリンケージによる繰り返しコホート研究のノルウェー版。一般化可能性が極めて高い。

■学歴の分類が一律に教育年数で行われているが、時代によって同じ期間の教育でもそれによって学べる内容も異なるし、社会階層の代用変数として学歴をとらえた場合、同じ教育年数でも階層は大きく異なる可能性がある。学歴を何を測定するものとして認識するかで解釈が変わってくる。

■絶対的格差と相対的格差を両方算出する意味はおおきく、観察する指標を上手く活用する例として参考になる。

■Relative index of inequality, slope index of inequalityは各カテゴリのサイズを調整したうえで、階層ごとの健康リスクを示すことができるため、時系列比較や地域間比較の場合の標準化の手法として有用だ。


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