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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2010.6.2

2010年6月2日 担当:真野

Fiber and Magnesium Intake and Incidence of Type 2 Diabetes A Prospective Study and Meta-analysis
~ 繊維とマグネシウム摂取と2型糖尿病の罹患率(前向き研究とメタアナリシス) ~
出典: Archives of Internal Medicine
著者: Matthias B. Schulze, DrPH; Mandy Schulz, DrPH; Christin Heidemann, DrPH;Anja Schienkiewitz, MPH; Kurt Hoffmann, PhD; Heiner Boeing, PhD
<論文の要約>
背景:
繊維、マグネシウムの摂取と2型糖尿病リスクとの関係についての前向き研究の結果は一貫していない。我々は、繊維、マグネシウム摂取と2型糖尿病のリスクの関連を調べたのち、既存の前向き研究をメタアナリシスによりまとめた。

方法:
コホート:我々は35歳から65歳までの男性9702人と女性15365人について前向きコホート研究を行い、1994年から2005年までの間、糖尿病の発症を観察した。食事摂取頻度調査法により繊維とマグネシウムの食事摂取量は測定された。Cox比例ハザードモデルを用いて相対危険(RR)を見積もった。
メタアナリシス:PubMedにより2006年5月時点での繊維、マグネシウム摂取と2型糖尿病のリスクの前向きコホート研究を検索した。繊維については9つのコホート研究を、マグネシウムについては8つの研究を同定し、変量効果モデルによってリスク比の集積を計算した。

結果:
コホート:European Prospective Investigation Into Cancer and Nutrition-Potsdam(以下EPIC-Potsdamと略す)で追跡した176117人年について、844例の2型糖尿病患者が観測された。穀物食物繊維の摂取が多いことは糖尿病のリスクと逆の関連を示したが、果実繊維と植物繊維と糖尿病リスクとは有意な関連がみられなかった。マグネシウム摂取はEPIC-Potsdamで糖尿病のリスクに関連しなかった。
メタアナリシス:メタアナリシスでは穀物由来の食物繊維の摂取が多いことが糖尿病リスクを減少させることを示した。果物・野菜由来の繊維と糖尿病のリスクについて有意な関連はみられなかった。メタアナリシスはマグネシウムについて糖尿病リスクと有意に逆の関連を示した。

結論:
穀類繊維とマグネシウム摂取が多いことは2型糖尿病のリスクを減少させる可能性がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■メタアナリシスについて
分析した各研究の分位数が違うので、各分位の代表値があれば連続値に変換して、単位増加当たりの絶対値を比較する解析方法が良いのではないか。

■メタアナリシスについて
欧米の研究を解析しているので、食物繊維の摂取状況がアジア諸国の食生活に当てはまらない。

■実際、臨床の場では食事療法を行う糖尿病患者に対して、食物繊維の摂取方法は主食となる白米や小麦粉を精製したパンより、玄米や大麦、全粒粉を使ったパンなどの摂取を勧める。玄米や大麦を白米と混合する場合に、混ぜる割合が重要だと考える。野菜の摂取による食物繊維の血糖上昇抑制に関しては、日常の食生活で必ずしも食物繊維が豊富な野菜を摂れるとは限らないので、野菜摂取が過不足ないように指導する程度である。可溶性・不溶性繊維の血糖降下作用に対しては個人差があるものと考え、どちらか一方を勧めることは避けているのが現状である。


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