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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2010.6.9

2010年6月9日 担当:芳我

Association of Maternal Stature With Offspring Mortality, Underweight, and Stunting in Low- to Middle-Income Countries
~ 低および中所得層にある国々における母親の身長と子どもの死亡・低体重・発育不全の関連 ~
出典: JAMA, 303(15), 1507-1516, 2010.
著者: Emre Ozaltin, et al.
<論文の要約>
背景:
母親の身長が子の死亡や健康状態と関連することは、これまでにも明らかにされてきたが、発展途上国に普遍的に認められるかどうかは明らかではない。

目的:
54の低中所得国における母親の身長と子の死亡・低体重・発育不全、あるいは乳幼児の衰弱との関係について検討すること。

デザイン・セッティング・対象者:
発展途上国で1991から2008年に実施された109の人口統計学的および健康状態に関する調査データ(DHS)を分析対象とした。調査対象は、15から49歳までの母親から生まれた生後0から59か月の子どもで、各国を代表する横断的サンプルである。サンプルサイズは、266万1519人(死亡数)、58万7096人(低体重)、55万8347人(発育不全)、56万8609人(衰弱)であった。

メインアウトカムの測定:
5歳未満の子どもにおける死亡、低体重、発育不全、衰弱の尤度(発症のしやすさ)

結果:
死亡数に関するデータセットにおける回答率の平均値は92.8%であった。調整モデルでは、母親の身長が1cm増加するごとに、子どもの死亡・低体重・発育不全・衰弱のリスクは減少していた。具体的には、死亡については絶対リスク差ARD;0.0014、相対リスクRR;0.988、95%信頼区間CI;0.987-0.988、低体重についてはARD;0.0068、RR;0.968、95%CI;0.968-0.969、発育不全についてはARD;0.0126、 RR;0.968、95%CI;0.967-0.968、衰弱についてはARD;0.0005、RR;0.994、95%CI;0.993-0.995という結果であった。160cm以上の身長のある母親から生まれた子どもの絶対死亡リスクは、0.073(95%CI;0.072-0.074)で145cm未満の母親から生まれた場合には0.128(95%CI ; 0.126-0.130)であった。

結論:
54の低・中所得国において、母親の身長と乳幼児期にある子の死亡・低体重・発育不全の間に反比例の関係が認められた。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■発展途上国において母親の身長が、子の死亡や健康状態に影響を与えるかどうかを明らかにするために、DHSという大規模なデータベースを活用した唯一の研究。多様な研究の限界はあるが、これほど大規模なデータを解析対象とする方法は他にないだろう。

■DHSは横断的な調査であるが、母親の身長という経時的に変化しない変数を用いたためにできた後ろ向きコホート研究である。


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