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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2010.9.15

2010年9月15日 担当:安田

Physical activity and depressive symptoms in adolescents: a prospective study
~ 青年期における身体活動と抑うつ症状:前向き研究 ~
出典: BMC Medicine
著者: Catherine Rothon, Phil Edwards, Kamaldeep Bhui, Russell M Viner, Stephanie Taylor and Stephen A Stansfeld
<論文の要約>
背景(目的):
青年期における精神疾患の頻度やその潜在的で縦断的な因果関係はリスク要因や予防要因の関係を調査する上で重要な主題となる。青年期における身体活動と抑うつ症状に関する調査は限定されている。特に縦断調査が不足している。本研究では東ロンドン地区の青年期にある子どもを対象とした地域社会健康調査(RELACHS)を用いて抑うつと身体活動の横断的および縦断的関係を調査する。

方法:
本研究は前向きコホート研究である。参加者は2001年に東ロンドンにある3つの教育特区からリクルートされた7年生(11-12歳)および9年生(13-14歳)が対象である。そして2003年にフォローアップが行なわれた。参加した28校すべての生徒は本研究に適していた。回答率は84%(2789人/3322人)であった。2003年のフォローアップも行なった回答率は75%(2093人/2789人)であった。サンプルは多くの人種からなり(73%は非白人)、貧しい生徒であった。ほぼ半数が男子であった(49%)。抑うつ症状はShort Moods and Feelings Questionnaire(SMFQ)を用いて測定された。横断的そして縦断的に身体活動と抑うつ症状の関係を調査するためにロジスティック回帰分析が行なわれた。

結果:
調整後、2001年のベースライン時における男女の身体活動と抑うつ症状の横断的関係は、1週間あたり1時間の運動増加が抑うつを約8%減少させること(男子:OR 0.92 95%CI0.85-0.99 女子:OR0.92 95%CI0.85-1.00)がうかがえた。しかし、ベースラインからフォローアップ(2003年)までの身体活動の変化とフォローアップ時の抑うつ症状との縦断的関係は見られなかった。

結論:
本研究では青年期における身体活動レベルと抑うつ症状減少との関係について幾つかのエビデンスを提示した。身体活動が青年期における抑うつに介入する効果があるものと推奨される前に更なる縦断調査が行なわれる必要がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■カテゴリー変数を連続変数に変換することは解析する上で一般的な手法である。例えば、年収を直接聞きにくい場合、選択枝から選んでもらう方が回答しやすい。

■しかし、今回の身体活動時間のようにカテゴリー変数「7時間以上」を連続変数「7時間」に変換することが一般的な方法であるので、身体活動時間が過小評価になることは限界である。

■Table3では、ベースラインでの身体活動時間と抑うつの関係を解析している。しかし縦断的検討ではベースラインからフォローアップまでの身体活動時間の変化とフォローアップでの抑うつについて解析を行っている(Table4)。ベースラインでの抑うつ状態で調整を行っていると書かれているが、どのような処理をしているか不明である。ベースラインで抑うつのケースを抜いた集団を対象とし、もしくは層化し、ベースライン時の身体活動時間が、その後の抑うつ発症にどのような影響を及ぼすかを検討したらよいのではないか。


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