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2011年5月13日 担当:高橋
Long-Term Effects of Wealth on Mortality and Self-rated Health Status
~ 致死率における富の長期的な影響と自己評価した健康状況 ~
~ 致死率における富の長期的な影響と自己評価した健康状況 ~
出典:
Am J Epidemiol 2011;173:192-200
著者: Anjum Hajat, Jay S. Kaufman, Kathryn M. Rose, Arjumand Siddiqi, and James C. Thomas
著者: Anjum Hajat, Jay S. Kaufman, Kathryn M. Rose, Arjumand Siddiqi, and James C. Thomas
- <論文の要約>
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背景:
疫学研究において社会経済学的な立場の要素としての富を含むことは多くはない。そこで本研究では富と死亡率・自己評価した健康状況(SRH)という2つのアウトカムの関係を調べた。
方法:
1968年より続いているUSの縦断研究、Panel Study of Income Dynamicsデータを用いた。健康に関する質問は各家庭の主人、またはそのパートナーに尋ねた。富は6つのカテゴリーに分類され、調整されたものは性別や人種によってリスク差やリスク比を用いて推定された。またロジスティック解析の周辺構造モデルや累積発現率モデルを、死亡の危険性を検討するのに使用した。
結果:
富が大きくなるのに従って、SRHの危険は減退した。また死亡率については、より富の少ない者ほど増加していた。これはより裕福な者たちほど主観的な健康度は上がり死亡率も低いことを示す。
限界:
SRH分析においてベースラインの調整をしなかった。より貧しい者はより年長でより不健康な傾向をもつ。このことは、SRH研究において選択バイアスを生る。そのため効果を過小評価している可能性がある。また、Panel Study of Income Dynamicsの比較的大きな摩耗があげられる。フォローできなくなった被験者は解析に含まれ、最終フォロー時点までの打ち切りデータとなる。打ち切りデータとなる個人はより高い死亡率と、またより貧しい傾向であると考えられ、これはバイアスを生じ、現実の死亡率を過小評価することにつながる。
強み:
1.Panel Study of Income Dynamicsの富のデータは正確かつ広範囲に測定されている。
2.大規模な時系列データは前向きに生涯を通じて富と健康の問題を探ることを可能にする。
3.縦断研究である。
4.周辺構造モデルを解析に用いている。
結論:
我々の研究では、所得や教育を制御した後においてもなお、男性、女性、白人において富と健康の一貫した関連がみられた。つまりこれは、社会経済的地位が健康に対してどれほどのインパクトがあるかのみならずどのようにして健康弱者になるのを防ぐか、を検討するために、独立して評価される所得や教育とは別に、富自体が何らかのインパクトをもつことを示している。
- <ジャーナルクラブでのディスカッション>
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■ロジスティック回帰分析の周辺構造モデルを数式から議論した。