PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.5.18

2011年5月18日 担当:下園

The Association Between Persistent Fetal Occiput Posterior Position and Perinatal Outcomes:
An Example of Propensity Score and Covariate Distance Matching
~ 持続性後方後頭位と出産結果との関係:傾向スコアとCovariate Distance Matchingの例~
出典: Am J Epidemiol. 2010 Mar 15;171(6):656-63.
著者: Yvonne W. Cheng, Alan Hubbard, Aaron B. Caughey, and Ira B. Tager
<論文の要約>
背景:
持続性後方後頭位(OP)と出産結果に関する多くの研究は観察研究であるため、解析時において制御されないバイアスや残差交絡について考慮しなければならない。交絡因子をコントロールするものとしては、層化や多変量回帰分析の手法を用いる方法がある。層化は簡単な手法であるが、データの不足のより、さらなるバイアスが生じ、また十分な比較検証が行えないという問題を抱いている。多変量回帰分析は、共変量とアウトカムの関連性を除去することで治療の効果を推定することができ、さらに複数の共変量による調整を同時に行うことができる。しかし、特にサンプルサイズが大きなデータにおいて、曝露因子と独立な交絡因子がそれぞれに分布をもつときに、それを十分に反映させられない、という問題がある。傾向スコア分析は、傾向スコアをひとつの交絡因子とみなすことで、共変量の調整を行うことができるので、特にサンプル数が大きく複数の交絡因子が存在する観察研究の解析に適している。本論文は、出産結果と出産時持続性OPの関連を多重ロジスティック回帰分析(MVLR)と傾向スコア分析(PSA)を用いて解析し、分析結果の違いを比較検証した。なお、本研究ではOPを症例群、前方頭位を対照群とした。

デザイン:
後向きコホート研究

方法:
1976年から2001年に、サンフランシスコとカリフォルニアで生まれた単胎児18,880人の出産記録を用いた。分析方法は、出産結果はMLVRとPSAにより推定された調整オッズ比と、傾向スコアでマッチングしたリスク差を検定した。

結果:
持続性OPは、出産方法や妊婦の有病と関連を示した。PSAで算出されたオッズ比は、MVLRの結果と比較し、やや大きく、信頼区間は狭いものとなった。統計学的推論を並び替え検定(permutation test)で評価すると、PSAの結果のが、MVLRと比較し関連性の値がより正確かつ信頼できる分析方法と考えられた。さらにPSAは、マハラノビスの距離によるマッチングを行うことで、治験により研究対象者へ侵襲を与えることなく治療間のリスク差を検定し、治療の妥当性を検証することが可能であることを示した。

結論:
先行研究では、サンプルサイズが十分に大きく、アウトカムが稀でない場合には、多変量解析の結果と傾向スコアの結果は類似することが報告されている。本研究では、PSAとMVLRの結果が類似しているものと相違しているものとの両方の結果が得られた。今後さらに観察研究においてPSAとMVLRを用いてその結果比較の検証を行う必要がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■これは、傾向スコアを紹介する論文である。

■除外基準は、どうしてこの基準に設定したのか。
→この除外基準を満たすものまで研究の標本に入れてしまうと、今検討したいことから外れるからではないか。


前のページに戻る