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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.5.25

2011年5月25日 担当:横道

Amoxicillin plus clavulanic acid versus appendicectomy for treatment of acute uncomplicated appendicitis: an open-label, non-inferiority, randomised controlled trial
~ 合併のない虫垂炎に対する、アモキシシリンとクラブラン酸治療と虫垂切除術の効果の比較:非盲検下、非劣性、ランダム化比較試験 ~
出典: Am J Epidemiol. 2010 Mar 15;171(6):656-63.
著者: Yvonne W. Cheng, Alan Hubbard, Aaron B. Caughey, and Ira B. Tager
<論文の要約>
目的:
急性虫垂炎は抗生剤で治療できる可能性があると言われ始めている。我々は合併(特に腹膜炎)のない急性虫垂炎について、アモキシシリンとクラブラン酸による治療の有効性と、緊急手術治療の有効性を比較、検討した。

デザイン:
非盲検下、非劣性のランダム化試験を、フランスの6つの大学病院共同で行った。18-68歳の成人を対象とし、(腹膜炎)合併症がない急性虫垂炎であることはCTスキャンにより評価した。主要評価項目は、治療後30日間の腹膜炎罹患である。非劣性の基準は、手術療法による効果の10%を超えていないことである。ITTとPPSの双方で解析した 。

結果:
123人が抗生剤群、120人が虫垂切除群に割り付けられた。4人が治療前にドロップアウトしたことで解析から除かれ、抗生剤群120人、虫垂切除群119人がITT解析にはかられた。CTスキャンで評価したはずであったが、虫垂切除群の119人のうち21人(18%)が腹膜炎を合併していた。抗生剤群は治療後30日の間に120人中14人(12%)が虫垂切除術を受け、1ヶ月後から1年の間には30人(29%)が虫垂切除術を受けた。そのなかで26人が急性虫垂炎を起こしていた。

解釈:
アモキシシリンとクラブラン酸での治療は急性虫垂炎に対して虫垂切除術に対して非劣性であるとはいえなかった。CTスキャンによる診断は、抗生剤治療の対象を見極めるのに貢献できるかもしれない。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■ITT解析と記載されているが、割り付け後にドロップアウトを認めている。本来の意味のITT解析ではないのではないか。
■虫垂炎の再発や腹膜炎を起こすことは、患者さんにとって何が有益かを考えれば、1年を超えてフォローアップし、それをアウトカムとした方が良いのではないか。ただ、患者さんの予後についてフォローが長くなればなるほど、追跡率が下がる研究になってしまうだろう。
■「感度と特異度の良いCT検査により腹膜炎合併症がないことを確認した」とあるが、どうやらすべての患者に筆者の言うMultidetector CTをもちいた訳ではないらしい。
■検証しようとすることに対して、非劣性検定はぴったりな検定であると考えられる。
■解析ソフトウエアとしてRを用いたことが疫学論文の中で堂々と通るようになったらしい。


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