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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.6.1

2011年6月1日 担当:春山

Risk of developing schizophrenia among Japanese high-risk offspring of affected parent : outcome of a twenty four year follow up
~ 統合失調症の親をもつ日本人の高リスク児における統合失調症罹患リスク 24年間追跡の結果 ~
出典: Psychiatry and Neurosciences 2009; 63(1):88-93
著者: Atsushi Nishida, PhD, Tsukasa Sasaki, MD, PhD, Seiichi Harada, MD, PhD,Masato Fukuda, MD, PhD, Kanji Masui, MD, Yukika Nishimura, PhD,Emi Ikebuchi, MD, PhD and Yuji Okazaki, MD
<論文の要約>
背景:
統合失調症の親の元に生まれた児の罹患リスクは10倍以上と推定されている。この家族研究は主に欧米で行われたものであるが、アジアにおいては長期に追跡調査したものはない。

目的:
①本人の高リスク児における統合失調罹患リスク要因と、欧米やイスラエル人の高リスク児の罹患リスクを比較検証する。
②両親の社会機能と精神科病院の入院の有無が、高リスク児の統合失調症罹患リスクの軽減につながるかを検証する。

方法:
24年間追跡できた親29人と児51人を分析対象とした。統合失調症の累積罹患率は、13.7%で、一生涯における有病率は13.5±4.8%と見積もられた。親の精神科入院と児の統合失調症の罹患リスクは有意ではなかった。親において、精神科入院歴がある者は、ない者と比べてGAFスコアは有意に低かった。

結果:
日本における高リスク児の統合失調症罹患リスクは、先行研究にある欧米の結果と類似していると考えられる。本研究より、親の精神疾患の重症度や社会機能レベルは、児の統合失調症罹患には、影響しないことが示唆された。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■対象者が1つの大学病院でリクルートされており、また追跡人数も少ない。日本人全体として一般化することは厳しく、Discussionにもある通り限界点を考慮して解釈されるべきである。

■将来的には、同様の研究を日本各地で行えば、この論文の結果を統合し、高リスク児の罹患リスクの傾向に関して、メタアナリシスを用いた検証が行えるかもしれない。ただし、その際に統合するのに必要なデータをさらにわかりやすく提示しておく必要がある。

■研究の背景に書かれている、高リスク児に関係すると思われる遺伝要因、環境要因についても考察が欲しいところだが、今回の研究の目的にはないためか触れられていない。今後の研究にゆだねるとしても、データを示して欲しいところ。

■本論文の副題が、「24年間の追跡調査」とあり、読者をひきつける論文タイトルである。読者が手にとりたくなるようなタイトルをつけることも重要である。


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