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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.6.8

2011年6月8日 担当:山北

The Effect of Light Rail Transit on Body Mass Index and Physical Activity
~BMIおよび身体活動に対する路面電車開通の影響~
出典: Am J Prev Med 2010;39 (2):105-112
著者: John M. MacDonald, PhD, Robert J. Stokes, PhD, Deborah A. Cohen, MD, MPH, Aaron Kofner, MS, Greg K. Ridgeway, PhD
<論文の要約>
背景:
・構築された環境は、身体活動の制約や、促進に影響を及ぼす。
・構築環境と健康との因果関係に関する多くの研究は、住宅の選択や交通手段の決定など、交絡に関する選択バイアスの問題がある。

目的:
・構築環境における客観的評価と認知評価の関連を横断的に検討すること (BMI、肥満、ウォーキングや高強度運動による推奨身体活動量 (RPA) の達成)。
・ライトレール輸送 (LRT) システムの利用によるBMI、肥満、RPAレベルへの効果を評価すること。

方法:
・ノースカロライナのシャーロットにLRTシステムができる前 (2006.7-2007.2) 後 (2008.3-2008.7.) にデータを収集。
・BMI、肥満、身体活動レベルをLRT建設の前後で比較した。
・傾向スコア重み付け法を用いて、ベースライン時のLRT利用者と非利用者の違いを調整した。
・データの分析は2009年に行った。

結果:
・ベースライン時の近隣環境に対する肯定的な認識は、低いBMI (-0.36,p<0.05)、低い肥満リスク (15%Low、95%Cl=0.77-0.94)、ウォーキングによるRPAの達成 (9%High、95%Cl:0.99-1.20)、高強度運動によるRPAの達成 (11%High、95%Cl:1.01-1.22) と関連していた。
・通勤手段としてのLRTの利用は、平均-1.18のBMIの減少と、81%の肥満リスクの減少と関連していた。

結論:
本研究の結果は、近隣環境を改善すること、および公共のLRTシステム(交通機関)の利用を増加させることは多くの人々の健康改善をもたらすことができるということを示唆した。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■駅までの距離を操作性因子として、解析を行っても良かったのではないか。
■LRT開通前後の比較のみであるので、別の地域をコントロール群として設ける必要があるのではないか。
■ベースライン調査からLRT開通(介入)までの期間が空いているため、因果の逆転が生じている可能性があるのではないか。
■LRT利用者の人数が少なく、運動習慣者の割合もかなり高いことから、対象者に偏りがあるのではないか。


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