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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2011年6月15日 担当:井川

Trajectories of Disability in the Last Year of Life
~ 死亡前の1年の機能障害におけるトラジェクトリ分析 ~
出典: N Engl J Med 2010; 362:1173-1180 April 1, 2010
著者: Thomas M. Gill, M.D., Evelyne A. Gahbauer, M.D., M.P.H., Ling Han, M.D., Ph.D., and Heather G. Allore, Ph.D.
<論文の要約>
背景:
高齢者とその家族にとって身体機能の状態は重要であるにも関わらず、終末期における障害の軌跡についてはほとんど知られていない。

方法:
ある地区に居住する754人の高齢者のうち亡くなった人383人のデータを縦断的に分析した。対象者は全員、研究当初は日常生活動作における障害がなく、障害レベルについて10年以上、毎月のインタビューにて確認した。死亡診断書とベースライン時から18か月ごとに記述している総合評価から死因等の情報を得た。

結果:
死亡前の1年において、「障害無し」から「重度障害の持続」まで、5つの異なる軌跡が示された。「障害なし」が65人(17.0%)、「急速な障害」が76人 (19.8%)、「加速的障害」が67人(17.5%)、「進行的障害」が91人(23.8%)、「重度障害の持続」が84人(21.9%)であった。 共通する死因は、老衰(107人、27.9%)、臓器不全(82人、21.4%)、癌(74人、19.3%)、その他(57人、14.9%)、進行性認知症(53人、13.8%)、突然死(10人、2.6%)だった。 障害の軌跡を死因ごとに見ると、進行性認知症のうち67.9%が「重度障害の持続」、突然死のうち50.0%が、「障害なし」であり、これらのみ特徴がみられた。他の4死因には、それぞれに「障害なし」が34%未満、「臓器不全」が12.2%~32.9%、「老衰」が14.0%~27.1%分布しており、特徴的な結果ではなかった。

結論:
亡くなる人の最期の1年の障害パターンは、主な死因による予測ができない。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■タイトルは「Trajectories~」となっているが、内容のメインは障害の軌跡よりむしろ死因との関連ではないか。結論も「死因による予測ができない」とまとめている。テーマ、目的、結論の一貫性が大事。

■死因の分類については、Lunneyらのプロトコールに従った分類では、実際のオーバーラップした死因をあてはめるには十分でない(例えば胃癌の患者が心筋梗塞で亡くなった場合など)。このことは研究の限界でも述べている。

■結論として、死因によって障害の軌跡が推測できないとしているが、例えば死因によって予測できるとしても、その結果を現場にどう活かせるのか不明。


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