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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.9.28

2011年9月28日 担当:須田

Global analysis of breast feeding and risk of symptoms of asthma, rhinoconjunctivitis and eczema in 6-7 year old children: ISAAC Phase Three
~ 母乳育児と6-7歳の時点での喘息、鼻炎結膜炎、皮膚炎のリスクとの関連についての世界規模の分析:ISAAC 第3相試験 ~
出典: Allergol Immunopathol (Madr). Received 26 January 2011; accepted 14 February 2011
著者: B. Björksténa,, N. Aït-Khaledb, M. Innes Asherc, T.O. Claytonc, C. Robertsond, the ISAAC Phase Three Study Groupe
<論文の要約>
目的:
幼少期の母乳育児の有無と6-7歳の時点での喘息、鼻炎結膜炎、皮膚炎の症状との関連性を明らかにする。

方法:
デザインは横断研究。子供の頃のアレルギーについて調べる世界規模の研究であるISAAC Phase Three。世界31カ国206453人の6-7歳児の両親に質問紙票を渡し、各種のアレルギー症状と母乳育児歴を聞いた。症状やアレルギー疾患の診断を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った。調整因子は性・母国の世界地図における地域・GNPほか。

結果:
母乳育児と6-7歳の時点での喘鳴症状(OR:0.99, 95%CI: 0.92-1.05)、鼻炎結膜炎症状(OR:1.00, 95%CI: 0.93-1.08)、皮膚炎(OR:1.05, 95%CI: 0.97-1.12)、重症な喘息症状(OR: 0.95, 95%CI: 0.87-1.05)とは有意な関連はみられなかった。しかしながら、母乳育児は、重症な鼻炎結膜炎(OR: 0.74, 95%CI: 0.59-0.94)、重症な皮膚炎(OR: 0.79, 95%CI: 0.66-0.95)のリスク減少と有意に関連していた。

結論:
生後1歳までの母乳育児と6-7歳の時点での喘息、鼻炎結膜炎、皮膚炎の症状の既往・出現と の一貫した関連は見出されなかった。しかし、母乳育児は重症な鼻炎結膜炎、重症な皮膚炎のリスクを下げる可能性がある。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■研究の強みは、世界規模で行われているため対象数が多いことである。

■共通の質問紙を用いた世界調査である。多言語にわたるため、翻訳文が原文の意味を正確に(accurately)伝えることが難しく妥当性(validity)が落ちることがあるだろう。

■6-7歳の時点での子供のアレルギー症状について親に確認してデータを得ており、専門的な診断や意見は確認していない。主観的評価と客観的評価は一致しないことがある。基準化した症状の判定方法の作成、医療プロフェッショナルによる均質な判定の導入などを工夫し、客観的評価を加えたほうが良いのではないか。

■いつの時点で、どれくらいの期間の母乳による育児の割合かが明記されていない。国別の母乳育児割合は、多くの国々は80~90%であるのに対し台湾は30%と極端に低いのはなぜか?

■研究の限界点として、リコールバイアスが述べられている。普通のアレルギー症状、シビアなアレルギー症状について答えるという形式の場合、シビアな症状についてのほうがリコールバイアスは生じやすいと考えられる。




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