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社会医学講座 | 山梨大学医学部

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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.10.5

2011年10月5日 担当:藤井

Women's compliance with nutrition and lifestyle recommendations before pregnancy: general population cohort study
~ 妊娠前栄養・生活習慣推奨事項に対する女性の遵守度:一般女性を対象としたコホート研究~
出典: BMJ 2009;338:b481 doi:10.1136/bmj.b481
著者: Hazel MI, Sarah RC, Keith M, Sharon E, Cyrus C, Sian MR, for the Southampton Women's Survey Study Group
<論文の要約>
目的:
妊娠を計画している女性が栄養や生活習慣の推奨事項にどの程度従うかを調査することである。

方法:
デザインは前向きコホート研究。イギリスのサウサンプトン女性調査に登録した中の20-32歳の妊娠していない女性12445名を対象とした。分析は、面接聞き取り調査後の3か月以内に妊娠した238名と妊娠しなかった女性の生活習慣の推奨事項の比較を、χ2検定、フィッシャーの直接確率検定、二項の信頼区間、連続変数の場合はt検定を行った。

結果:
面接調査後、3か月以内に妊娠した238名(妊娠群)のうち、2.9%(95%信頼区間 1.2%-6.0%)は、400μg/日かそれ以上の葉酸サプリメントの摂取と4ユニット/週かそれ以下のアルコール摂取であった(1ユニット=8gエタノール)。一方、非妊娠群では0.66%(95%信頼区間 0.52%-0.82%)で、妊娠した女性の方が推奨事項をわずかではあるが遵守していた。また喫煙していない割合は、妊娠群が74%、非妊娠群が69%であった(P=0.08)。果物・野菜を適切な量(5皿・それ以上/日)摂取していた割合は、両群ともに53%で差はなかった(P=1.0)。妊娠群は妊娠前に57%が強めの運動をしていたのに対して、非妊娠群は64%であった(P=0.03)。

結論:
妊娠を計画している女性においても推奨される栄養や生活習慣に従うのは、ほんのわずかな割合でしかない。ほとんどの妊娠は計画的ではないので、出産適齢期の女性たちに栄養と生活習慣の改善の必要性と、推奨事項の啓発が必要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■先行研究とは異なり、妊娠する前の女性たちから情報を得ていることが研究の強みである。しかし、わずかではあるが妊娠群の方がアルコールや喫煙、運動する割合が低く、葉酸サプリメントの摂取率が高いことから、妊娠を計画していたごく少数の女性では推奨される栄養や生活習慣が遵守できていたのではないかと考えられる。

■研究の限界として、面接調査時に、過去3カ月前の葉酸、アルコール等の生活習慣について聞いていることが、リコールバイアスとなっている可能性がある。

■本調査結果は英国の一部地域の結果であり、著者らは英国の一般的な人々を代表する結果であると主張しているが、無理があるのではないか。

■妊娠初期においては妊娠したことはわからないことであり、妊娠を予期して推奨される栄養や生活習慣を遵守することは難しい。本調査結果からは、妊娠前の女性たちに推奨される健康習慣に変容させる根拠を示すことはできない。




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