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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.10.12

2011年10月12日 担当:真野

Low-carbohydrate-diet score and risk of type 2 diabetes in women
~ 女性における低炭水化物食スコアと2型糖尿病リスク ~
出典: Am J Clin Nutr. 2008 February; 87(2): 339-346
著者: Thomas L Halton, Simin Liu, JoAnn Manson, and Frank B Hu
<論文の要約>
背景:
低炭水化物の減量食の人気は続いている。しかし、その食事療法の長期的な効果は知られていない

目的:
低炭水化物食スコアと2型糖尿病のリスクとの関連を検討すること

方法:
看護師研究の女性85059名について、低炭水化物食スコア(炭水化物、脂質、たんぱく質によるエネルギー比率に基づく)と糖尿病のリスクの関連を前向きに検討した

結果:
20年追跡し、2型糖尿病は4670例を記録された。BMIや他の共変量を多変量解析で調整後、低炭水化物食スコアの第十十分位は第一十分位に対して0.90(95%信頼区間:0.78‐1.04;トレンドp値=0.26)の相対危険があった。総炭水化物、動物性たんぱく質、動物性脂肪に基づく低炭水化物食スコアの第十十分位は、第一十分位に比べ、相対危険は0.99(95%信頼区間:0.85‐1.16;トレンドp値=1.0)、総炭水化物、植物性たんぱく質、植物性脂肪に基づく低炭水化物食スコアでは、その相対危険は0.82(95%信頼区間:0.71‐0.94;トレンドp値=0.001)だった。第十十分位と第一十分位の比較から、より高いグリセミック負荷の食事は、糖尿病のリスク増加と強く関連を示した(RR:2.74;95%信頼区間:1.75-3.47;トレンドp値<0.0001)。十分位の両端の比較から、高い炭水化物の消費は、糖尿病リスクの増加と関連していた(RR:1.26;95%信頼区間:1.07-1.49;トレンドp値=0.003)

結論:
これらのデータから、低炭水化物、高脂質、高タンパク質の食事療法が女性において2型糖尿病リスクを増加させているとは言えない。実際、植物性の脂質とタンパク質が豊富な食事は糖尿病のリスクを多少なりとも減らすかもしれない


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■Table2において、BMIを調整する必要性についての議論が挙がった。
BMIで調整することで初めて、低炭水化物食と糖尿病の発生の関係を直接的に見ることになる。BMIを調整しないと、グループ間の体格の差が強く効き、低炭水化物食の効果が隠れてしまうからである。

■今回の集団の炭水化物量を求めたところ、低炭水化物食である第十十分位の炭水化物量が1食平均38.4gであった。本来、低炭水化物食として推奨する炭水化物量は1食20g以下のはずである。

■研究の強みは、対象者数が多いこと、先行研究の追跡期間6カ月~1年と比べると、20年という期間が長いことである。

■研究の限界点は、研究対象者が大学教育をうけた白人女性が多数を占めるという構成である。




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