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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.11.2

2011年11月2日 担当:高橋敦

Minimum amount of physical activity for reduced mortality and extended life expectancy: a prospective cohort study
~ 死亡率を下げ平均余命を延ばすための運動の最小量:前向きコホート研究 ~
出典: Lancet 2011 ;378 ; 1244-53
著者: Dr Chi Pang Wen MD, Jackson Pui Man Wai PhD, Min Kuang Tsai MS, Yi Chen Yang MS, Ting Yuan David Cheng MS, Meng-Chih Lee MD, Hui Ting Chan MS, Chwen Keng Tsao BS, Shan Pou Tsai PhD, Xifeng Wu MD
<論文の要約>
背景:
余暇の運動が健康に有効であることはよく知られている。しかし推奨されている150分/週以下の運動が平均余命に効果があるかどうかはよく知られていない。そこで台北のStandard medical screening programmeに参加した健康な人々を対象に前向きのコホート研究を行った。

方法:
台北のStandard medical screening programmeに参加した416175人の20歳以上の健康な人々(男性 199265人 女性216910人)を対象に13年間で3,350,000人年追跡した。平均追跡期間は8.05年である。参加者は全員、薬歴と生活習慣の情報についての質問用紙を自己管理した。全員一年に一度の受診を求められ、受診するたびに同じ質問用紙に記入する。これより1週間の運動量によって集団を5つのカテゴリーに分け、運動をしないグループに対しての死亡率のハザード比を計算することで平均余命を計算する。

結果:
運動を全くしないグループに対して、一日平均15分の適切なで熱心な運動をしているグループはあらゆる原因による死亡のリスクを14%減少させ平均余命は3年増加した。さらに日に15分の運動を追加するに従ってあらゆる原因による死亡のリスクは4%、あらゆるがんによる死亡のリスクが1%減少することが示された。これは年代や性別に関係なく適用できる。さらに心臓に疾患のある人にも適用できた。

結論:
年代や性別そして心臓に疾患のある人であっても、いままでに推奨されていた運動量よりも少ない1日に15分の運動が健康に効果があることが分かった。これによってより多くの人が運動を行いやすくなるだろう。さらにがんの危険が減少することがわかったのも重要である。なぜならがんは人々の主要な死因であるので、がんに効果があるというメッセージは運動をしない人たちに運動への動機を与えるからである。
また本研究では推奨以下の運動で得られる健康の効果は報告できたが、平均余命を伸ばすための最低の量は特定されなかった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■データを収集した機関がどういう機関なのかが、不明である(国から委託されて調査している民間の会社なのだろうか?)。そのためデータの収集に恣意的なものが入っていないかどうか判断しづらい。→The National Health Research Institutes (NHRI)とは政府によって設立された非営利団体である。保健医療症と中華民国行政院の指導をうけて自主的な調査を行う。医療調査の向上と国のヘルスケアの改善を使命としている。

■20代が多くその追跡期間も10年程度なのに、死亡をアウトカムにしてしまって良いのか。

■こうした研究に参加できる方々は経済的に裕福である傾向が強いのではないだろうか。もしそうであるとするならば、一般化することに問題が生じるのではないか。




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