PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.11.30

2011年11月30日 担当:陳

Effect of calcium supplementation in pregnancy on maternal bone outcomes in women with a low calcium intake
~ 妊娠中低カルシウム摂取量の女性に対するカルシウム補給の効果 ~
出典: Am J Clin Nutr 2010; 92: 450-7
著者: Landing MA Jarjou, M Ann Laskey, Yankuba Sawo, Gail R Goldberg, Timothy J Cole, and Ann Prentice
<論文の要約>
背景:
母親の骨ミネラルに含まれるカルシウムの一部は、胎児または新生児骨成長のため供給されている。私たちは妊娠中に低カルシウム摂取量の女性が、産後の骨状態に短期ならびに長期に、どのように影響するのかが本研究の目的である。

方法:
125名西アフリカのGambiaの低カルシウム摂取量(350 mg Ca/d)を取っている妊婦は、妊娠20週から分娩まで炭酸カルシウム(1500 mg Ca/d)を摂取した群とプラセボを摂取した群を分けて、分娩後第2、3と52週にDXA(dual-energy X-ray absorptiometry)を用い全身、腰椎、大腿骨の骨の状態を測定した。SPA (single-photon absorptiometry) を用い、前腕の骨の状態を測定した。血液と尿のサンプルは妊娠20週、分娩後13週で集めた。

結果:
妊娠中のカルシウムの補給を受けた女性は、12カ月の泌乳期間に大腿骨で有意に低い骨塩量(BMC)、骨領域(BA)、および骨密度(BMD)を示した。(mean±SE difference: BMC=210.7±3.7%, P=0.005; BA=23.8±1.9%, P=0.05; BMD=26.9±2.6%, P=0.01)。さらに12カ月の泌乳期間に腰椎と橈骨遠位端で骨の大きな減少を経験し、共に生化学的変化があった。カルシウムのサプリメントは、母体の体重や小さいBAが観察された臀部の骨サイズに有意な影響をしめさなかった。

結論:
低カルシウム摂取量の妊婦にとってカルシウム補給は、元来の代謝には適応せず、また母体の骨の健康に必ずしも有益な訳ではないことが示唆された。母体の血圧とリプロダクティブヘルスのための有益性の証拠がある場合は除いて、国際的なカルシウム推奨量の妥当性について、疑問を投げかける結果となった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■先進国の妊婦にカルシウム投与は必要だろうか。←調べた結果、日本では必要とされていない。

■この研究はアフリカのカルシウム摂取量が少ない妊婦を対象としている。カルシウム投与群で、出産後母体の骨密度が増加する部位と減少する部位があるのはどういう訳だろう。骨代謝が単純でないのか、それとも測定が正確でないのか。

■骨密度受診をしに来る被験者に対して測定されている。また、部位によっては訪れた被験者の多くで測定できていない骨密度がある。この欠測は、もっと慎重に解析する方法を模索できないだろうか。

■カルシウム、リン、上皮小体ホルモン(パラソルモン)、カルシトニンは測定しているが、ビタミンDを測定していないのは残念だ。アフリカのような日光の多い地域では、ビタミンDの影響を無視できないはず。




前のページに戻る