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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2011.12.7

2011年11月30日 担当:野田

Objectively measured physical capability levels and mortality: systematic review and meta-analysis
~ 客観的に測定された身体能力レベルと死亡:システマティックレビューとメタアナリシス ~
出典: Am J Clin Nutr 2010; 92: 450-7
著者: Landing MA Jarjou, M Ann Laskey, Yankuba Sawo, Gail R Goldberg, Timothy J Cole, and Ann Prentice
<論文の要約>
背景:
身体能力は、自己申告による評価もでき、握力、歩速、起立、立位バランスのような検査を行うことにより客観的にも評価ができる。単体の研究から、これらの客観的な身体能力の指標が、現在や将来の健康のマーカーであることが示されている。歩速、立位バランス、起立と死亡率の関係を調べるための文献のシステマティックレビューが行われたことはない。握力に対する既存のレビューは、結果のメタアナリシスをしておらず、研究間の不均一性について調査を行なっていない。集団の住んでいる地域での身体能力のレベルの低さと、その後の高い不健康や死亡のリスクが関連しているという仮説を検証するために、システマティックレビューを行った。公開された研究や、研究の著者たちとの連絡を通じて手に入れた結果のメタアナリシスをすることを目指し、握力、歩速、起立、立位バランス、と死亡との関連の大きさを推定した。また、これらの関連が、ベースラインでの性別、年齢、追跡期間や研究が行われた国によって、ばらつくのか調べた。

方法:
Embase(1980年以降)、Medline(1950年以降)を用いて文献検索を行い、出典リストの検索を手作業でし、同定した2009年5月までに出版された関連する研究と、非公開の結果を研究者から手に入れた。適合する観察研究は、特定の身体能力の指標(握力・歩速・起立・立位バランス)のうち少なくともひとつと、死亡との関連について調べられ、その地域に住むすべての年齢の人に行われたものである。得られた効果の推定は、調査された研究間の不均一性についてランダムエフェクトメタアナリシスモデルを使うことで、集められた。

結果:
不均一性が認められたが、4つ全ての身体能力の指標と死亡の間の関連について、一貫したエビデンスが得られた。これらの検査で、より悪い結果を出した人たちは、すべての死因のリスクがより高くなることがわかった。例えば、握力の弱い方から4分の1の人と、強い方から4分の1の人を比べた死亡に対するサマリーハザード比は、1.67(1.45-1.93)で、年齢、性別、体型で調整してある。歩速が、遅い方の4分の1と速い方の4分の1を比べた死亡に対するサマリーハザード比は、2.87(2.22-3.72)で、同様の調整をしてある。歩速、起立、立位バランスと死亡との関連の研究が、高齢者にしか行われていない一方(平均年齢70歳以上)、握力と死亡の関連は、若い集団でも見つけられた。(5つの研究は、平均年齢が60歳未満)

結論:
身体能力の客観的な指標が、高齢者の住んでいる地域で、すべての死因を予測するのに使える。そのような指標は、それゆえ、死亡に対するハイリスクな高齢者を同定するのに役に立つ道具を提供するかもしれない。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■観察研究におけるメタアナリシスは、RCTにおけるメタアナリシスで言われているようなエヴィデンスレベルの高さはないので、勘違いしてはいけない。メタアナリシスを行う目的には、潜在的な系統誤差の有無の確認と、もし系統誤差があるならば、それが何かを考察することがある。今回の論文では、heterogeneityの考察がなされているが、研究間または研究内での不均一性が高いとされているにもかかわらず、その原因については、はっきりと示しているわけではなく、研究の目的がぶれている。

■funnel plot とは、出版バイアスの有無を見た目で表す方法で、同じ項目に対する結果の値を、並べたときに、ある数を中心に、正規分布に近い分布を示したならば、出版バイアスはないと判断され、良い結果ばかりに偏って、ある値を境に分布が大きく変動するような場合、出版バイアスがあると考えられる。出版バイアスについての考察が、今回の論文で行われているが、その詳細が書かれていない。また、出版バイアスの検出の方法もいろいろあるが、諸論あり、コンセンサスの得られているものはないはずである。

■今回の論文の特徴として、解析から除外された論文の内容が示されているのが、強みである。どういった内容の論文が解析から除外されて結果にどう影響を与えるか、読者が考えることができる。除外された論文は、メタアナリシスが多い。




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