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社会医学講座 | 山梨大学医学部

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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2012年2月15日 担当:横道

Adverse events following influenza A (H1N1) 2009 monovalent vaccines reported to the Vaccine Adverse Event Reporting System, United States, October 1, 2009-January 31, 2010
~ 新型インフルエンザワクチン接種後の有害事象―米国VAERSへの報告データから~
出典: Vaccine 2010 Oct 21;28(45):7248-55.
著者: C. Vellozzi, K. R. Broder, P. Haber, A. Guh, M. Nguyen, M. Cano, P. Lewis, M. M. McNeil, M. Bryant, J. Singleton, D. Martin, and F.
<論文の要約>
背景:
米国のインフルエンザA(H1N1)2009、1価ワクチンプログラムが2009年10月に始まった。新型ワクチンのまれな有害事象や、通常では起こり得ない有害事象のパターンを検出するために、ワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System, VAERS)という米国の自発報告システムデータを検討した。

方法:
米国FDAとCDCが管理するVAERSはワクチン接種後の有害事象自発報告サーベイランスシステムである。因果関係を評価するものではない。このデータベースを解析し、5シーズン分の季節性インフルエンザワクチンと2009年冬シーズンの死亡、ギラン・バレー症候群、アナフィラキシーの、有害事象中の割合を比較し、カイ二乗検定を行った。

結果:
約1万件の新型ワクチン接種後の有害事象の構成は、季節性インフルエンザワクチンのそれと異なるものではなかった。新型ワクチンの有害事象報告率は季節性ワクチンのそれに比べて大きかった。これは、新型については積極的に報告しようという意識が働いたのかもしれない。新型ワクチンの有害事象としての死亡、ギラン・バレー症候群、アナフィラキシーの報告はきわめてまれであった(100万件の接種に対して1未満)。

結論:
新型インフルエンザワクチンは、米国で配られる2010年冬シーズンのインフルエンザワクチンの3株のうちの1つになると考えられている。我々の、2009年冬シーズンの新型インフルエンザワクチンについての総合的なVAERSデータ評価と、VAERSデータ自身の改善が2010年冬シーズンのインフルエンザワクチンの安全性モニタリングの強いいしずえとなる。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■自発報告システムでは、1件の有害事象を医療者とワクチン被接種者の双方が重なって報告する可能性はないだろうか。今回の3つの有害事象については、CDCの医師がカルテ記録を探索した、とある。しかし、探索できたかどうかは書かれておらず、重なって報告されている可能性がある。

■VAERSはインターネットにより報告される、とある。高齢者では、under-reportが多くなってしまうのではないだろうか。

■それまでの4シーズンに比べて、2009年冬シーズンのギラン・バレー症候群の報告件数は季節性・新型ワクチンとも急激に上がっている。これはなぜか?この年に報告する意識が急激に上がったのか。
→製造方法と承認過程が季節性のそれと同じであったのに、新型ワクチンの有害事象報告割合および、2009年冬のVAERSへのアクセスが大きくなっていることから、その可能性は否定できない。一方、ギラン・バレー症候群の原因として、インフルエンザワクチン以外にマイコプラズマ、カンピロバクター、サイトメガロウイルス等、感染症を契機とするものが疑われている。そういった感染症が米国で流行った年には、ギラン・バレー症候群の有害事象報告数は上がることも考えられる。




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