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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.2.22

2012年2月22日 担当:井川

The Relation between Neighborhood Built Environment and Walking Activity among Older Adults
~ 近隣の建物環境と高齢者の歩行活動の関係 ~
出典: Am. J. Epidemiol. (2008) 168 (4): 461-468.
著者: Corey L. Nagel ,Nichole E. Carlson,Mark Bosworth,Yvonne L. Michael
<論文の要約>
背景:
歩行は典型的な身体活動であり、歩行を推進することは高齢者の全面的な健康につながる。先行研究では、公園、公共スペース、商店、歩道の状態、人口密度、土地利用方法、近隣の景観などと、歩行の間に強い関連性が報告されているが、建物環境と高齢者の歩行の関係を検証した研究はほとんどない。そのため本研究は、近隣特性と高齢者の身体活動が関連するという先行研究における調査を拡大して行い、調査対象者の1週間あたりの歩行時間と、居住地区から半径0.4kmおよび0.8kmごとに測定された建物環境との関係を明らかにする。

方法:
ポートランド93地域のうち56地区に住む「高齢者の健康と身体運動」(SHAPE)調査の参 加者546人(一地区平均10名)を対象に、1週間あたりの歩行時間と(Yale身体活動スケール)、居住地区から半径0.4kmおよび0.8kmの建物環境との関係を明らかにした。調査対象者は56地区からコンピューターによる電話インタビューシステムの住所から選び、建物環境と近隣レベルは地理情報システムから得た。

統計・分析:
SHAPEのマルチステージにあるデータ構造を分析するために「個人」の水準1と「近隣地域」を水準2とするマルチレベルモデルを用いて分析した。

結果:
歩行時間には地区による差があり、ある程度歩行している人にとっては個人要因と近隣特性が顕著に関係していた。住宅から半径0.4km内においては、商店やselect establishments、交通量の多い通りの数と歩行時間が強く関係しており、交通量が少ないことと歩行の少なさも関連していた。半径0.8kmでも同様の関係が見られた。また、歩行の種類について分析した結果では、住宅から半径0.4km以内に、交通量の多い通りが多いと運動としての歩行が増え、交通量の少ない通りが多いと運動としての歩行が減ることに関係していた。0.8km内では、交通量の多い通り、少ない通り、コンビニエンスストアやデパート、商店数が、運動的としての歩行時間を増やすことに関連していた。また住宅から最寄りの公園への距離が遠いほど、運動としての歩行時間は少なかった。余暇としての歩行においては、歩行時間と建物環境特性の間の関係性は見られなかった。個人要因としては、歩行への自己効力感、白人、年齢、低所得が、歩行時間を増やすことに関連しており、近隣の地域問題が多いことは、歩行時間の減少に関係していた。

結論:
歩行しない高齢者にはこのような環境への介入効果がほとんどないが、歩行を好む高齢者にとっては、土地利用や歩行者にやさしい近隣設計の促進が、より活発な活動を促進する重要な役割を果たす可能性を示唆している。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■結果として、よく歩行する高齢者にとっては、住宅近隣の建物環境がさらに歩行を促進することにつながるが、あまり歩かない高齢者への活動促進のアプローチが課題となる。

■ロジスティック回帰モデルを行った結果では、歩行時間と建物環境に関連が見られなかった。

■歩行時間をどのように測定したかは記述がない。

■調査を行った地域特性の影響をかなり受けるのではないか→この研究は「歩行者にやさしい」地区であり、一般化は難しいと記述がある。

■「余暇的歩行」と「活動的歩行」の定義が分かりにくいが、JCでは、散歩を楽しむような歩行を「余暇的」、運動目的での歩行を「活動的」と考えた。




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