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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.3.7

2012年3月7日 担当:須田

Family eczema-history in 2-year olds with eczema; a prospective, population-based study.The PACT-study, Norway
~ アトピー性皮膚炎の2歳児の家族アトピー性皮膚炎歴について:地域住民をベースにした前向き研究:ノルウェーのPACT-study ~
出典: Saunes et al. BMC Dermatology 2011, 11:11
著者: Marit Saunes, Torbjørn Øien, Ola Storrø and Roar Johnsen
<論文の要約>
目的:
家族のアトピー性皮膚炎歴については、異なる2時点で情報収集し、子供の母親と父親ときょうだいのアトピー性皮膚炎と2歳の時点での子供のアトピー性皮膚炎との関連について調査する。

デザイン:
地域住民をベースにした前向き研究(PACT study)

セッティング:
ノルウェーのトロンヘイム

対象者:
2000年9月から2006年6月30日の間にトロンヘイムの子供達のアレルギー予防研究に参加している両親と子供達

結果:
母親と父親両方のアトピー性皮膚炎と子供のアトピー性皮膚炎との間に有意な関連が見られた。子供が1歳の時点のアトピー性皮膚炎の家族歴の報告では(n=3087)、きょうだいのみがアトピー性皮膚炎(調整オッズ比3.13,95%信頼区間:2.27-4.33)ということだけでなく、アトピー性皮膚炎のきょうだいも含んだ他の家族グループと、2歳の時点での子供のアトピー性皮膚炎の報告との間に強い関連が見られた。子供が生後6週間の時点で報告された家族のアトピー性皮膚炎歴をみると(n=2657)、きょうだいのみがアトピー性皮膚炎と、2歳の時点での子供のアトピー性皮膚炎の報告との間に関連は見られなかった(調整オッズ比1.31,95%信頼区間:0.77-2.23)。

結論:
子供が1歳の時点のアトピー性皮膚炎の家族歴の報告では、アトピー性皮膚炎のきょうだいがいるということによって、両親のアトピー性皮膚炎と子供のアトピー性皮膚炎との間の関係性が強化された。アトピー性皮膚炎の家族歴の質問紙をベースとした調査から得られた結果について示しているこれらの見解は、いずれにせよ、アトピー性皮膚炎の子供がさらに増えることによって決定づけられる。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■研究の強みは、選ばれた集団ではないだけでなく、研究対象の大きい集団全体であること、前向きな研究デザインであることである。

■アレルギーの家族歴があれば、自然に子供のアレルギー発症の割合が高くなるのは当然のことであるので、改めて検証しなくても良いのではないかと考えられるが、この研究の注目すべき点は、家族歴の中にきょうだいのアトピー性皮膚炎歴を入れ検討した点である。

■子供を対象とした調査の場合、その事象に付随する様々な事を一緒に思い出してしまう状況があることにより、過剰なリコールバイアスがかかる場合がある。




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