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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.5.9

2012年5月9日 担当:高橋敦宣

Comparison of associations of body mass index and measures of central adiposity and fat mass with coronary heart disease , diabetes , and all-cause mortality : a study using data from 4 UK cohorts
~ 冠状動脈疾患の罹患・糖尿病の罹患・全死亡とBMI・中心性肥満・脂肪量との関連の大きさの比較研究 ~
出典: The American Journal of CLINICAL NUTRITION.March 2010 vol.91 no.3 547-556
著者: Amy E Taylor, Shan Ebrahim, Yoav Ben-Shlomo, Richard M martin, Peter H Whincup, John W Yarnell, S Goya Wannameyhee, and Debbie A Lawlor.
<論文の要約>
背景:
近年、BMIは脂肪の分布を測定しているわけではないことからリスクの測定として批判されている。いくつかの研究では腹囲脂肪を測る胴囲(WC)やウエスト・ヒップ比(WHR)やウエスト・身長比(WHtR)の測定を用いることが推奨されている。しかしBMIと比較して胴囲や腰周り、脂肪量の測定値は信頼性が低いとされている。また、これまでに発表されてきたそれらの異なる測定値で全身及び部位別の肥満度を比較しようとする論文は一貫性のあるものではなかった。一方BMIを用いた研究では評価されるアウトカムは異なるものであった。本研究の目的は、BMIの代わりとして胴囲、ウエスト・ヒップ比、ウエストと身長比と中心性肥満、脂肪量を直接に比較することにある。

方法:
イギリスのBWHSS、CaPS、Boyd Orr Study、Maidstone-Dewsbury Studyという4つの前向きコホート研究を用いた。BWHHSやCaPSにおいて身体測定値とあらゆる原因での死亡、致命的・非致命的な冠状動脈疾患の罹患の関連を、そしてBWHHSにおいて身体測定値とDMの罹患をCox比例ハザードモデルにより解析した。STATAを用いて、それらの研究の統合分析を行った。

結果:
冠状動脈疾患及び心血管疾患の罹患とBMIの関連の大きさは、それら2つの疾患と中心性肥満(胴囲、ウエスト・ヒップ比、ウエスト・身長比)を表わす測定値及び直接の脂肪量測定値との関連の大きさと類似していた。

結論:
臨床や公衆衛生の現場においてBMIの代わりに他の肥満に関する指標を用いる強い根拠は検証されなかった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■全死亡の原因に癌は入ってくるのだろうか。現在、癌と痩せは関連すると考えられている。脂肪量の増加と冠状動脈疾患、糖尿病の発生には関連が在るので、もし全死亡に癌が入ってくるのならば数値の解釈が変わる可能性が出てくるのではないか。

■図1(冠状動脈疾患や糖尿病、全死亡と身体測定値の関連を示した図)でオッズ比の点推定を比べるのであれば、対数目盛りを用いるのではなく素の目盛りを用いるのが良いのではないか。

■今回得られた結果からは、この論文の結論に反して、全死亡や2型糖尿病を予測するための指標として、やはり腹囲を測るほうが良い、という結論になるのではないだろうか。




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