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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.5.23

2012年5月23日 担当:横道

The Relationship between Components of Metabolic Syndrome and Open-Angle Glaucoma
~ 米国メタボリックシンドロームの要素と開放隅角緑内障の関連 ~
出典: Ophthalmology. 2010 Aug;117(8):1521-9.
著者: Paula Anne Newman-Casey, MD, Nidhi Talwar, MS, Bin Nan, PhD, David C. Musch, PhD, MPH, Joshua D. Stein, MD, MS
<論文の要約>
目的:
米国のメタボリックシンドローム(糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満)と開放隅角緑内障の関連があるか、米国の多様な個人を含んだ集団で調べること。

方法:
経時コホート研究である。曝露を上記4つの疾患、プライマリアウトカムを開放隅角緑内障の発症として、コックス比例ハザードモデルにより解析した。また眼科疾患の既往や社会人口学的な要因により共変量調整した。参加者は、2001年から2007年の間に米国の私保険に加入しており、眼科医または視機能測定師を訪れた40歳以上の保険受領者である。各疾患の同定には、支払履歴を用いた。

結果:
参加の2182351人中55090人(2.5%)が開放隅角緑内障を発症した。交絡の調整後、糖尿病患者の開放隅角緑内障のハザード比は1.35、高血圧患者のハザード比は1.17、であった。

結論:
米国ではメタボリックシンドロームの有病率が増加しており、本研究は開放隅角緑内障と関連するリスク要因の理解を深める結果である。また、開放隅角緑内障のリスクを誰が持っているか、についての理解を助けてくれる結果である。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■この研究では、糖尿病であること、高血圧症であること、高脂血症であること、病的な肥満であること、が曝露として取り扱われている。その曝露を特定した時点の明確な定義がない。2001年1月1日時点と想像されるが、記述が欲しい。

■組み入れ基準の中の、「7年間で1度でも眼科医または視機能測定師を受診した者」という項目は、一長一短ある。長所は、眼科の専門家により開放隅角緑内障の発症を確実に補足できることであり、短所は、それでは罹患率が通常の意味より大きくなってしまうことである。

■2001年から2007年までに眼科医または視機能測定師を受診した参加者は829万人いたが、いくつかの除外基準により603万もの人が除外されている。どの基準でどれだけの人が除外されたのか、記すべきだった。

■考察では、この論文の結果である、「高脂血症の有病は開放隅角緑内障のリスクを下げる」ということを支持する先行研究と生物学的機序のみが記されている。実際には高脂血症が眼圧を上げる、とする論文も多数みられ現在も議論が続いている。

■人種・経済状態・教育歴と開放隅角緑内障の発症との関連を分析し、またそれらにより調整してすべての結果を提示していることはこの論文の長所だろう。それらを調整した上で、曝露の効果が残ったことは、そのまま解釈することも可能である一方、開放隅角緑内障の罹患リスクを、社会人口学的な説明変数とメタボリックシンドロームをもつ、という説明変数とで効果を分け合った可能性もある。


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