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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.6.20

2012年6月20日 担当:春山

Association between provision of mental illness beds and rate of involuntary admissions in the NHS in England 1988-2008: ecological study
~ イギリス国民健康保険における精神科病床の供給と措置入院率の関連 1988‐2008:生態学的研究 ~
出典: BMJ 2011;343:d3736 doi:10.1136/bmj.d3736
著者: Patrick Keown ,Scott Weich, Kamaldeep S Dhui, Jan Scott
<論文の要約>
背景:
高所得の国々では精神病床の閉鎖が進んでいるが、西ヨーロッパでは措置入院が増加している。入院治療への財源の投入は、地域ベースのケアにかける費用を圧迫する。そのため、病床数の減少と措置入院率の関連を理解することが必要である。

方法:
1988年から2008年までの、公的に入手できるイギリスの国民健康保険(NHS)のデータを使用。10万人あたり精神科病床供給数と、その年の措置入院の割合について、相関分析を行った。また、毎年のベッド供給の変化と措置入院率との間における、1年ごとのタイムラグの関係を調べるために、部分相関係数を計算し、年ごとの措置入院率の変化を従属変数として回帰分析を行った。

結果:
精神科病床の年減少率が60%以上となると同調するように、NHSでの措置入院の割合は60%/年以上増えていた。措置入院の増加とベッド数の減少の関連において、ベッド数の減少が1年先行する時に、これらの変数間でもっとも強い相関が見られた(相互相関係数-0.60、95%信頼区間-1.06から-0.15)。

結論:
毎年の精神科病床数の減少は措置入院率と短~中期的に関連していた。精神科病床を2床閉鎖すると、翌年措置入院件数が1件増加していた。この研究は将来の措置入院の割合を予想する手段となるとともに、今後病床閉鎖が続くことで何が起こるかを示唆している。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■病床数を減らし、地域でケアをする中で、なぜこのように措置入院が増えるのか。Discussionに挙がっているように、病床が足りないので入院が遅れて悪化したり、患者も治療者も措置入院を使うような意識になっているかもしれないし、どんな人が退院していったかにもよる。入院の方が安定していたのに退院によってストレスが増加したかもしれない。または、家族のケアまで行き届いていないかもしれない。この施策が不十分な点。病床数と措置入院率のバランスが取れるのはどのくらいなのか?

■日本においてはこの30年、自発的な入院を奨励してきたが、任意入院率は上がっているのか。

■Time lagの解析の研究はそれほど多くないので、有意義だった。日本においてもそのようなデータがあれば、同様の研究ができる。このような関連を調べることが必要な分野は他にもある。


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