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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.7.4

2012年7月4日 担当:藤井

Associations of dietary calcium intake and calcium supplementation with myocardial infarction and stroke risk and overall cardiovascular mortality in the Heidelberg cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study (EPIC-Heidelberg)
~ EPIC-Heidelbergによる食事中カルシウム及びカルシウムサプリメンの摂取と心筋梗塞と脳血管疾患及び全循環器疾患死との関連 ~
出典: Heart; 2012; 98: 920-925
著者: Kuanrong Li, Rudolf Kaaks, Jakob Linseisen, Sabine Rohrmann
<論文の要約>
背景:
高カルシウム摂取は、心臓血管に変化を起こす危険因子である可能性が示唆されているが、心血管疾患(CVD)に限定するとリスクは最終的には減少するという結果が示されている。一方、最近のエビデンスでは、カルシウムサプリメントを摂ることで、心筋梗塞のリスクが増加するとの警告がなされている。本研究では、食事からのカルシウム摂取とカルシウムサプリメントが心筋梗塞と脳血管疾患のリスク及び全循環器疾患死との関連を予測評価することを目的とした。

方法:
EPIC-ハイデルベルクコホートの参加者23,980人のデータから、35-64歳で、調査の募集時に生命にかかわる心血管疾患にかかっていなかった者を対象に解析した。Cox回帰モデルによりハザード比を検討した。

結果:
1994-1998年にベースラインの調査を行い、その後平均11年間追跡調査を行った。その結果354名の心筋梗塞、260名の脳血管疾患と267名の循環器疾患死が観察された。食事中のカルシウム及び乳製品のカルシウム摂取を四分位に分類し、第1四分位(reference)と第3分四分位を比較すると、心筋梗塞のリスクは、それぞれ0.69(95%Cl:0.50-0.94)、0.68(95%Cl:0.50-0.93)で、ハザード比は有意に減少していた。脳血管疾患のリスクと全循環器疾患死においては、すべて関連はみられなかった。カルシウム等のサプリメント使用者を何も使用していない者と比較すると、心筋梗塞のリスクはハザード比において1.86(95%Cl:1.17-2.96)であり、さらにカルシウムのみのサプリメント使用者では2.39(95%Cl:1.12-5.12)と有意に増加していた。

結論:
食事からのカルシウム摂取の増加は、循環器にとって有意な利益はもたらさないかもしれない。だがその一方、カルシウムサプリメントは、心筋梗塞のリスクを上げるかもしれないので、注意をしていくべきである。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■カルシウムサプリメント使用者は、未使用者にくらべ、女性の割合が高率で平均年齢も高いことから、調整をした結果ではあるが、性別、年代別に層別化して検討した方がよいのではないか。しかし、11年間の追跡調査における疾患の発生割合は高くないことから、層別化した時の数が問題となり、これ以上の分析は無理であったのかもしれない。

■食事中のカルシウム摂取量の比較において、カルシウムサプリメント使用の調整は行っているが、サプリメントからのカルシウム量を把握しておらず、量的な影響がないとはいえない。

■心筋梗塞や血管の石灰化に対して、マグネシウムやビタミンKの欠乏も影響すると考えられるが、これらの摂取量について考慮しなくていいのだろうか。


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