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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.9.5

2012年9月5日 担当:鮎川

Long-Term Outcome Poststroke: Predictors of Activity Limitation and Participation Restriction
~ 脳卒中後の長期的なアウトカム評価:活動制限と参加制限の予測因子 ~
出典: Arch Phys Med Rehabil 2011;92:1802-8
著者: Vered Gadidi, MSc, Michal Katz-Leurer, PhD, Eli Carmeli, PhD, Natan M. Bornstein, MD
<論文の要約>
背景:
脳卒中発症4年後の患者について、長期に渡る活動制限と参加制限、患者の回復感を記述し、要因間の関連を評価するために調査を行った。加えて、脳卒中発症時に存在する要因のうち、発症後4年経過した時点での活動制限や参加制限のレベルを予測できる因子を検討した。

方法:
2004年2月から3月の間にイスラエルのシェバ医療センターで認められた初発脳卒中患者139名を追跡し、活動制限や参加制限について再評価した。活動制限はBarthel Index、参加制限はFrenchay Activities Indexを使用して、それぞれ制限の有無を分類した。4年間の評価期間での活動制限や参加制限の予測因子モデルは多重ロジスティック回帰分析を行った。身体障害や参加制限に関連した変数は、有意水準0.05とした変数減少法を用いて多重ロジスティックモデルに組み入れた。結果は相対危険度の推定値としてオッズを、95%信頼区間とともに与えた。

結果:
研究のアウトカム時点である脳卒中後4年時点で、9名(6.4%)が追跡できず、71名(54.1%)の患者が生存していた。その中の42.3%が活動制限を、28.2%が参加制限をもっており、78.1%は完全に回復したとは感じていなかった。発症時の年齢と急性期での身体障害は、脳卒中後4年時の活動制限の最も重要な予測因子であった。人口学的特性やベースライン時の臨床的な特性で参加制限を予測できるものはなかった。脳卒中後4年で活動制限と参加制限の間で正の相関(p=0.6)が示された。

結論:
これはイスラエルにおける脳卒中者の長期結果を記述したはじめての研究である。脳卒中後4年後には、活動制限と参加制限は依然非常に高い割合で残存する。参加制限の予測因子として(社会心理的な、認知的、そして環境に関するような)ほかの要因が影響している可能性は、将来の調査でトピックスとなるだろう。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■ベースラインでの各評価の測定時点が不明確である。発症前の身体障害の程度、急性期での身体障害の程度が発症後どれくらいの後に評価されているかが明記されていない。

■研究への同意がどのように、いつ取られたのかが明記されていない。倫理的に大丈夫な研究なのだろうか?

■図、表の表記が正確でない。表2では、前向き研究のはずが、症例対照研究の割合の示し方になっている。図2,3は対象者数が同数のはずなのに、そのN数が異なっている。

■4年後の死亡者数が調査から外されている。死亡が最悪のアウトカムであると考えれば、それを除いて解析したことが果たして正しかったのだろうか。



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