PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.9.19

2012年9月19日 担当:島田

The health and development of children born to older mothers in the United Kingdom: observational study using longitudinal cohort data
~ 英国において高齢の母親から産まれた子どもの健康と発達について:コホートデータを用いた縦断的観察研究 ~
出典: BMJ 2012;345:e5116 doi: 10.1136/bmj.e5116 (Published 21 August 2012)
著者: Alastair G Sutcliffe , Jacqueline Barnes, Jay Belsky, Julian Gardiner, Edward Melhuish
<論文の要約>
目的:
母親の高年齢出産と子どもの健康・発達との関係を把握する。

方法:
英国で2001年から2007年までの、Millennium Cohort StudyとNational Evaluation of Sure Startのランダムサンプルから、9か月児31,257人、3歳児24,781人、5歳児22,504人を対象に、2値変数の結果では、混合効果ロジスティック回帰モデルを、連続変数の結果には線形モデルを用い分析した。主な、アウトカム指標は、9カ月児・3歳児・5歳児の不慮の事故、3歳児と5歳児のBMI、言語発達能力、問題となる社会的発達であり、独立変数は出生時の母親の年齢である。

結果:
3歳児の不慮の事故によるリスクは20歳の母親の児は36.6%で、40歳の母親の児は28.6%と減少し、入院のリスクも20歳の母親の児は27.1%で40歳の母親の児は21.6%と低下した。9カ月児の予防接種率は、20歳の母親の児は94.6%で40歳の母親の児は98.1%と母親の年齢が増すごとに接種率は高くなり、3歳児予防接種率も、母親の年齢に伴って有意な関係を示していた。児のBMIは、母親のBMIが共変量として含まれなければ、出産年齢増加ともに3歳児と5歳児の肥満に関連していた。言語発達能力や社会性発達も、出産年齢上昇とともに改善され、有意差が示された。

結論:
出産年齢上昇は、児の健康と発達に影響をおよぼし関連していることがわかった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■最初に年齢の一次式を用いて分析し、有意差がでなかったデータをさらに年齢の二次式モデルを用いて分析をしているが、全データを二次式モデルで分析してもよかったのではないか。

■欠損値がそれぞれのデータに10%以上みられ、Missing at Random(MAR)の仮定のもとで解析されている。MARが成り立つもとではこの解析は有効だが、それはこの調査で仮定できそうにない。

■Millennium Cohort StudyとNational Evaluation of Sure Startのサンプルは、本来違う目的で収集されていたデータであるが、別々に分析しさらに総合計サンプルとして分析を行なった結果、すべてにおいて、母親の年齢と子どもの健康・発達に類似の結果が出たことは意義ある内容と捉えてもいいのではないか。



前のページに戻る