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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2012年9月26日 担当:秋山

Dairy products and calcium intake during pregnancy and dental caries in children
~ 妊娠中の乳製品とカルシウムの摂取と子供のう歯 ~
出典: Nutrition Journal 2012;11:33
著者: Keiko Tanaka, Yoshihiro Miyake, Satoshi Sasaki and Yoshio Hirota
<論文の要約>
背景:
乳歯の形成、石灰化は胎児形成時に発達する。したがって母親の栄養状態を含む子宮内の環境は歯の発達、形成、石灰化に重要な役割を果たし、それにより小児のう歯へのなりやすさに影響を与えている可能性がある。この研究では、大阪母子保健研究のデータを使用し、母親の妊娠中における乳製品・カルシウムの摂取と、日本人小児のう歯リスクとの関連を調査する。

方法:
ベースライン調査として妊婦1005人に前月の食事歴質問票と母親の年齢、妊娠期間、家族の収入、教育水準(母親・父親)、妊娠中の喫煙習慣の質問票を郵送により行った。その後の調査にすべて参加し、児の情報を完全に提供した妊婦315人を研究対象とし、食事歴質問表より乳製品とカルシウムの摂取量を低・中・高の3分位に分類し、その分類に応じた子供のう歯の有無を調査した。41~50ヵ月(3.4~4.1歳)の児の乳歯の1つ以上の乳歯がう歯、もしく詰め物をしていた場合、う歯を持っているものとしてアウトカムに分類した。3分位に応じて児のう歯の粗オッズ比と95%信頼区間をロジスティック回帰分析によって推定した。先行研究から可能性のある交絡因子として、母親の年齢と妊娠期間、家族の収入、教育水準(母親・父親)、妊娠中の母親の喫煙状況、児の授乳期間、固形食品導入年齢、最初の歯の萌出年齢、歯磨きの頻度、フッ化物の使用、歯の定期健診受診の有無、家族の喫煙状況、口腔検査時の児の年齢、児の乳製品の摂取頻度をいずれも質問票によって調査し、多重ロジスティック回帰分析によって調整した。

結果:
研究対象の315人の子供のうち、74人(23.5%)がう歯が確認された。乳歯のう歯もしくは処置歯の平均数は0.87であった。乳製品摂取量の三分位に応じたう歯の比較では、チーズの高摂取がう歯の予防に有意な関係があった。(高値の調整オッズ比0.37、信頼区間0.17-0.76、傾向性p値0.01)。解析を行った315人の児は除外された687人の児と比較して、高齢の母親、より高い家族の収入、比較的高い教育水準の親であり、ヨーグルトとカルシウムの摂取量が高く、妊娠中の母親の喫煙にさらされている可能性が低かった。

結論:
日本において、妊娠中の母親のチーズ高摂取は、小児のう歯リスクの低下と関連することを見出した。牛乳の摂取と小児う歯のリスクとの間に明らかな関連はなかったが、妊娠中の合計乳製品摂取、ヨーグルト摂取、カルシウム摂取の高い母親は、児の虫歯のリスク低下と関連する傾向があった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■Abstractにおいて、研究デザイン、期間、場所が明記されていない。研究において必要な情報を載せていないのは問題がある。

■アウトカムのう歯の確認を歯科衛生士で行った際の妥当性は。歯科医師が行わないのはなぜか。それだけの費用とエネルギーと時間を使った調査ができなかったのだろうか。

■今回の研究では、妊娠中の合計乳製品、ヨーグルト、カルシウムの高摂取は子供の虫歯のリスク低下と関連する傾向があるという結果になったが、サンプル数が315名と少ないため、βエラーとなっている可能性がある。



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