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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.10.10

2012年10月10日 担当:手塚

Older People's Quality of Life (OPQOL) scores and adverse health outcomes at a one-year follow-up. A prospective cohort study on older outpatients living in the community in Italy.
~ 高齢者のQOLと不良な健康アウトカムについての1年間の追跡調査。イタリアの地域在住外来通院高齢者の前向きコホート研究 ~
出典: Bilotta et al. Health and Quality of Life Outcomes 2011;9;72
著者: Claudio Bilotta Ann Bowling, Paola Nicolini, Alessandra Casè, Gloria Pina, Silvia Veronica Rossi1 and Carlo Vergani
<論文の要約>
背景:
先進国での人口の迅速な高齢化は、健康の悪化を招く為、不良な健康アウトカムの大きなリスクを背負う個人を特定し、彼らを社会的・衛生上の予防措置のターゲットにする必要性が強調されている。さらにquality of life(QOL)とhealth-related QOL(HRQOL, 健康関連の質)は、特定の健康悪化の因子となる事が報告されている。しかし、地域在住の高齢者で、特定の慢性疾患を対象とせず、廃用症候群や他の交絡と独立にQOLとHQOLによる死亡と不良な健康アウトカムを予測する事に関する知見は少ない。そこで、外来患者を1年間フォローアップし、QOLおよびHRQOLの能力を評価し、それにより転倒、健康悪化、転帰を予測できるか、を検討する事を目的として本研究を行った。

方法:
イタリアミラノの地域在住外来通院高齢者210人の前向きコホート研究を実施した。参加者へは組み入れ時に生活の質(OPQOL)調査票により、QOLおよびHRQOLの評価を含む高齢者総合機能評価を実施した。1年後、2010年6月から12月の間に、過去1年の転倒・老人ホーム入所・死亡・救急入院・入院・機能の依存状況を調査した。

結果:
1年後、187名が地域に居住し、3名が回答困難に、7名が老人ホーム入所し、16名が死亡していた。多重ロジスティック解析の結果、QOLスコアが低値な者はそうでない者に比べて転倒アウトカムは2.67倍、救急外来からの入院アウトカムは2.5倍のオッズ比となった。HRQOLでもスコアが低値であれば転倒のオッズ比は2.4倍となり、HRQOLが低値な者は死亡や老人ホームへ入所に関連する傾向があった。OPQOLスコアが低値の者は、高値だった者に比べてオッズ比にして2.16倍転倒のリスクが高かった。同じく、低値だった者は高値だったものに比べて2.21倍救急入院するリスクが高い傾向にあった。

結論:
イタリア地域在住外来通院高齢者にとって、OPQOLおよびHRQOLが低値であることは1年後に不良な健康アウトカムをきたすことに対する独立した予測因子であった。特に、HRQOLに乏しいことは廃用症候群で調整しても、老人ホームへの入居および死亡を予測していた。この研究の結果はQOLの予後との関連を支持し、強めることとなった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■今回、年齢、性、併存疾患、教育、年収、独居という交絡因子を調整してQOLと健康悪化との関連をみた事が新しいデザインである。

■QOLを「Lowest quartile vs rest」と分けてあるが、本来なら比較するために1/4ずつの4分割または、2分割に分けるのが通常ではないのか。今回のように分けた意図があるならそれを記述するべきである。これは先行研究に倣っているのか。

■年齢の上限はどれくらいなのか記述されていない。対象者が外来患者である為、比較的年齢が若く、活動性ももともと高い人が対象者となっているのではないか。それはこの研究を一般の高齢者に外挿する際の限界になる。



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