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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.10.17

2012年10月17日 担当:杉田

A short message service (SMS) - based strategy for enhancing adherence to antipsychotic medication in schizophrenia.
~ 統合失調症における統合失調症治療薬のアドヒアランスを向上させるためのSMS戦略 ~
出典: Psychiatry Research: 24 July 2012.
著者: Jose Manuel Montes, Esteban Medina, Manuel Gomez-Beneyto, Jorge Maurino.
<論文の要約>
目的:
統合失調症治療上、SMSを用いた戦略がアドヒアランスに及ぼす影響を評価すること。

デザイン:
6ヶ月間のRCT(multicentre, open-label)、介入群:3ヶ月間服薬するためのSMSを毎日送る。

アウトカムとその測定方法:
主要アウトカム:自己報告服薬アドヒアランス;Morisky Green Adherence Questionnaire (MAQ) total score; 0 (good adherence)-4 (poor adherence)、副次アウトカム:疾病の重症度、服薬態度、病識、健康関連のQOL

セッティング:
記載なし

対象者:
外来受診をしている統合失調症の患者

結果:
254名の患者で解析された。対症群と比較して、SMS介入群でアドヒアランスの改善が有意にあった。ベースラインから3ヶ月時点でのMAQスコアの平均の変化は、介入群で-1.0 (CI; -1.02, -0.98)、対照群で-0.7 (-0.72, -0.68)。3ヶ月時点で陰性症状、認知的症状、全般的臨床症状に大きな改善があった。服薬態度も2群間で有意に改善した。

結論:
SMSを用いた介入で、服薬アドヒアランスを向上させることが実現可能で、許容できるようだ。さらなる研究で、この手の介入が統合失調症におけるアドヒアランスを最適にする補完的な戦略となりうるかどうか確認する必要がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■アドヒアランス遵守率はどの程度保たれていることが治療上必要なのか。

■二群に割付する前に、SMSを確実に受信できるかどうかを確認していないため、介入群から66名の逸脱を除いて解析している。ITTの概念からは逸脱してしまっている。

■介入群に毎日SMS送信をしているが、その頻度で送ることが本当に効果的であるか疑わしい。

■サンプルサイズを事前に算出する際に、症例減少率も含めて計算している点は参考にすべき点である。

■非盲検化の場合、参加者に先入観や思い込みのバイアスがかかる可能性があり、主観的な評価尺度だけでは正しい評価ができないかもしれない。

■二群に割付ける際に、もしその介入が効果的なことが一般的に言われているのであれば、対照群になにもしないことは倫理的に問題になることがある。

■ヘルスプロモーションの概念から、患者個人だけに介入するのではなく、家族や制度など社会状況を考慮した介入を行った方が、継続的に効果のある介入になるのではないか。



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