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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.10.31

2012年10月31日 担当:Wei Zheng

Advanced Pubertal Growth Spurt in Subjects Born Preterm: The Helsinki Study of Very Low Birth Weight Adults
~ 早産児における思春期の身長のスパートの早発:極低出生体重であった成人のHelsinki Study ~
出典: J Clin Endocrinol Metab, February 2011, 96(2):525-533
著者: Karoliina Wehkalampi, Petteri Hovi, Leo Dunkel, Sonja Strang-Karlsson, Anna-Liisa Ja¨ rvenpa¨ a¨, Johan G. Eriksson, Sture Andersson, and Eero Kajantie
<論文の要約>
背景:
正期産児における低出生体重と思春期早発の関連が指摘されているが、早産児についての研究結果は少ない。

目的:
極低出生体重(Very Low Birth Weight, VLBW)の早産児と正期産児における思春期の成長のタイミングの違いを検討すること。 

デザイン、セッティングと対象者:
118名のVLBW児と190名の正期産児を追跡した。そのうち、VLBW児128人と正期産児147人についての成長データが利用可能であったが、VLBW児15人、正期産児1人に神経学的障害あったため、除外した。

主要アウトカム指標:
思春期の身長のスパートを評価する指標は、在胎期間を調整した思春期スパートの立ち上がり年齢(age at accelerationあるいはage at take-off)、身長最大発育量を示す時の年齢(peak height velocity of pubertal growth)および最終身長時年齢(age at attaining adult height)であった。

結果:
思春期の成長におけるすべでのアウトカムにおいて、コントロール群よりVLBW児のほうが早かった。
●思春期スパートの立ち上がり年齢では、
満期出産胎児齢相当(Appropriate for Gestational Age, AGA)のVLBW児は、 コントロール群に比し0.8(95%CI,0.4-1.3)年早かった、
胎内発育不全(Small for Gestational Age, SGA)のVLBW児は. コントロール群に比し0.9(95%CI,0.4-1.5)年早かった。
●思春期スパートが平均より2年早いことのリスクについては、
VLBW児は、コントロール群に対しOR : 3.8(95%CI,1.5-9.6)であった。

結論:
低体重で生まれることは、それ自体の思春期の身長のスパート時期を早めることと関連している。その、早い思春期は成人代謝異常を仲介する因子の一つであるかもしれない。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■思春期成長のタイミングに対し、初期成長(0-2歳)の影響を検討するため、立ち上がり年齢や身長最大発育量の年齢を目的変数、0-2歳間で4ヶ月ごとの身長や体重の増加量を共変量とし、ほかの交絡因子を調整した上で、SGA児(或いはAGA児)/正期産児を説明変数にして、多重線形回帰を用いて解析した。
モデルから得た身長や体重の増加量の回帰係数は、SGA(或いはAGA)児の身長や体重の増加量による思春期成長のタイミングが遅くなるか(正の値)、早まるか(負の値)を表す。総じてこれらは負の値となっている(早まっている)。

■この研究のコントロール群の対象者は、曝露(VLBW)群の対象者に性、年齢と出生病院をマッチして選ばれた。よく用いられるマッチングの方法は頻度マッチングと個別マッチングである。頻度マッチングではマッチした変数の分布が曝露群(ケース・コントロール研究ではケース群)のそれと同一或いは類似するようにコントロール群を選択する。個別マッチングでは各曝露(ケース)群の対象者について、1人から数人のコントロールをマッチする。ある変数についてマッチングする時、その変数の分布のマッチング条件がある範囲をもつとき、個人マッチングする必要はない。個別マッチングをすると統計的効率が下がることになる

■出生体重による分類:
  →高出生体重児 high birth weight infant
  →巨大児 giant baby : 4000g以上
  →超巨大児 exceptionally large baby : 4500g以上
  →正出生体重児 normal birth weight infant :2500g以上、4000g未満
  →低出生体重児 low birth weight infant : 2500g未満
  →極低出生体重児 very low birth weight infant : 1500g未満
  →超低出生体重児 extremely low birth weight infant : 1000g未満




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