PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.12.5

2012年12月5日 担当:島田

Effect of pregnancy planning and fertility treatment on cognitive outcomes in children at ages 3 and 5: longitudinal cohort study 
~ 計画妊娠や不妊治療による子どもたちの3歳と5歳までの認知能力について;縦断コホート研究 ~
出典: BMJ 2011;343:d4473 doi: 10.1136/bmj.d4473
著者: C Carson,Y Kelly, JJ Kurinczuk, M Redshaw
<論文の要約>
目的:
計画妊娠や不妊治療による妊娠が、生後3歳や5歳の子ども達の認知能力の発達にどのように影響を与えているかを分析する。

方法:
英国のミレニアムコホート研究を基盤に、2000年から2年に出生した9か月の児をランダムサンプルし、その母親たちの妊娠の方法についてインタビューし、①無計画妊娠②予定外妊娠③計画妊娠④低受精率妊娠⑤排卵誘発による妊娠⑥生殖補助医療妊娠(体外受精または人工授精)と妊娠方法を分類した。そしてその子ども達の3歳,5歳の時点における認知能力をBASⅡ(言語能力,非言語能力,空間的能力からなる能力)で評価し、母親の妊娠方法が子どもたちの認知発達に影響を及ぼしているかを、線回帰モデルで分析した。また、交絡因子を調整するために4つのモデル因子を変数として設定し、5%水準で有意差を検証した。最終的な解析サンプル数は、3歳時点は11,790人、5歳時点は12,136人であった。

結果:
未調整の分析では、無計画妊娠は計画妊娠の子どもより、平均言語能力のスコアの差は3歳では著しく低く、-4.8(95%信頼区間-6.0~3.7; P <0.05)で4ヶ月の平均遅延時間に相当していた。しかし、社会経済や基本属性の要因による調整後は、-0.3(-1.3~0.7)であり、有意差はなくなり言語能力への影響も否定された。また、生殖補助医療後に生まれた子ども達の言語能力は、3歳で3.8(-0.2~7.9)と5歳で3.5(0.2~6.8)で、優れている結果が示されたが、交絡因子の調整後では、3歳、5歳でそれぞれ1.6(-1.6~4.7)および2.2(-0.6~4.7)で減少した。
さらに不妊治療後の5歳時における非言語能力テストは低く、生殖補助医療後-1.2(-4.1~1.6)、排卵誘発後-1.1(-3.1~0.9)で低い結果であった。また、空間能力検査も生殖補助医療後は-2.7(-6.9~1.6)で低い結果であった。

結論:
計画妊娠、低受精率、生殖補助医療後の妊娠は、出生後3歳や5歳の子供達の認知能力の発達に影響していなかったことが示唆された。未調整の分析で観察された差異は、グループ間における社会経済の著しい不平等によって説明される。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■生殖医療後の子どもの言語能力は高かったが、治療ができるほど親の経済力があり、親の高学歴が影響し、生殖治療後の妊娠の影響よりも社会的要因が関連していたのではないか。

■研究者は、先行文献の計画妊娠と子どもの認知への影響などの報告も参考にして、研究を始めているが、研究者の意図がわかりづらい。社会的格差と妊娠の方法も問題になるのではないか。

■出産後のインタビューにより妊娠の方法を把握しているが、母親の主観的見解もあり、本当に計画妊娠か無計画妊娠か母集団の分類に問題があるのではないか。



前のページに戻る