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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.12.12

2012年12月12日 担当:浅野

Designing prevention programmes to reduce incidence of dementia: prospective cohort study of modifiable risk factors
~ 認知症の発症を減少させる予防プログラムの設計:変容可能な危険因子の前向きコホート研究 ~
出典: BMJ 2010; 341:c3885 doi:10.1136
著者: K Ritchie, I Carrière, C W Ritchie,C Berr,S Artero,M-L Ancelin
<論文の要約>
目的:
認知症の疫学研究では、人口レベルにおいて疾病低減のための介入へ目を向ける事は比較的軽視されている。そこで、認知症の特定のリスク要因が排除された場合に得られるであろう認知症の発症率の減少を推定する。

方法:
研究デザインは、7年間の前向きコホート研究であり、ベースライン時が平均72.5(SD5.1)歳で65歳以上のフランス、モンペリエの一般参加者1433名を対象とした。標準化された神経学的検査によって確立された軽度認知症または認知症の診断をアウトカムとし、特定のリスク要因(社会人口学的要因:年齢・性別、臨床要因:アポリポ蛋白E(以下APOE)ε対立遺伝子・心疾患等の血管疾患・糖尿病・高血圧・うつ病・麻酔使用歴・抗コリン剤の服用、環境とライフスタイル:野菜や魚の消費・カフェイン摂取・ニコチン摂取・教育期間)を調整し、Coxモデルにてハザード比を推定し、変容可能な危険因子の相互作用と交絡影響を特定する。また、最終的なアウトカムとして集団寄与危険割合を用いた。

結果:
集団寄与危険割合で教育期間が短いことが18.11%、うつ病があることが10.31%、果物と野菜の消費が少ないことが6.46%、糖尿病の存在が4.88%、APOEε4対立遺伝子の存在が7.11%となった。

結論:
よく知られている遺伝的危険因子を除去した効果と同程度に、教育歴の増加、果物と野菜の消費、うつ病、糖尿病の除去は認知症発症を減少させる上で大きなインパクトを持っていそうである。因果関係を確実に締結することはできないが、本研究は公衆衛生プログラムに報告すべき優先順位を示唆している。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■この調査における参加者の選考において、ランダマイズではないことから推定結果に議論の余地があるのではないだろうか。

■死亡でドロップアウトした場合は認知症の群に入っていないとすると生存している者のなかでの認知症発症がアウトカムになる。それが本当にみたいもののようには思えない。→このコックス比例ハザード分析で、死亡はcensorとして扱われている。ハザード比の推定に問題はないと考える。

■先行研究で言われているリスク因子をまとめて解析し、集団寄与危険割合のかたちで提出した、予防の側面を強調した研究である。



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