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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.12.19

2012年12月19日 担当:春山

Early detection and intervention evaluation for people at risk of psychosis: multisite randomized controlled trial
~ 精神病リスクのある人々への早期介入:多地域におけるランダム化試験 ~
出典: BMJ OPEN ACCESS
著者: Anthony P Morrison 他17人+
<論文の要約>
目的:
統合失調症のような重い精神病のリスク状態の若い人々において、精神病に移行するのを認知療法により防ぐ効果があるかどうかを検証する。

方法:
イギリス国内5か所において、単盲検による無作為化試験を行った。精神病の高いリスクのある14-35歳までの288名(mean_20.74、SD_4.34歳)を144名は認知療法と精神状態のモニタリング、144名は精神状態のモニタリングのみの2群に割り付けた。プライマリアウトカムは精神病への移行、症状の重さ、ストレスとし、セカンダリアウトカムは機能の全体的評定尺度(GAF)、Beckのうつ病尺度、社会不安スケール、QOL評価とした。対象者がどちらに割り付けられているかを知らない評価者が評価することで盲検化した。

結果:
精神病への移行についての分析は生存時間モデルを使用した。全体的に、精神病への移行は期待していたより低く(23/288;8%)、2群の差は見られなかった(オッズ比0.73,95%信頼区間0.32‐1.68)。セカンダリアウトカムとしての症状の重さとストレスの変化は、ランダム効果回帰(共分散分析)により場所とベースラインの症状を調整した。精神症状によるストレスは差がなかった(12か月での推定差は-3.00、95%信頼区間-6.95から0.94)、しかし重症さは認知療法のグループで有意に減少した(12か月でのグループ間のeffect size-3.67、-6.71から-0.64、P=0.018)。

結論:
精神病ハイリスクの若い人々において、認知療法とモニタリングは精神病への移行とそれに関連したストレスを減弱するとは言えなかったが、重篤さは減少していた。両群のほとんどの参加者は時間の経過に従い改善していた。結果は精神病リスク状態の概念に重要な含みを持っている。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■対象集団である「アットリスク状態」が漠然としてつかみにくい。

■先行研究における精神病移行率の比較を行っているが、各研究での対象集団はどのくらい一致しているか。

■脱落した人の偏りはなかったかが不明である。

■Discussionにおいて抗精神病薬の有毒性と比較して認知療法や傾聴的なモニタリングを勧めているが、今回の結果には薬物についての検討はされていないため単純には比較できない。



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