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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.1.9

2013年1月9日 担当:真野

Adolescent BMI Trajectory and Risk of Diabetes versus Coronary Disease.
~ 青年期のBMIの軌跡が、糖尿病に与える影響と冠動脈心疾患に与える影響の比較研究 ~
出典: The New England Journal of Medicine: 7 April 2011. 364:1315-25
著者: A.Tirosh, I.Shai, A.Afek, G.Dubnov-Raz, N.Ayalon, B.Gordon, E.Derazne, D.Tzur, A.Shamis, S.Vinker, A.Rudich,
<論文の要約>
背景:
成人初期における肥満関連の病気と青年期から成人期BMIの軌跡との関連は、完全には説明されていなかった為、青年期から成人期のBMIが2型糖尿病と冠動脈心疾患の発症リスクにどのような影響があるか検討した。

方法:
イスラエル軍医療部のスタッフ周期健診センターを通じて、血管造影で判明した冠動脈心疾患と糖尿 病の発症について健康な若者37,674名を追跡した。コックス比例ハザード解析を用いて、青年期および成人期のBMIによる2型糖尿病および冠動脈心疾患との発症リスクを求めた。

結果:
フォローアップの約650,000人年の中で(平均フォローアップ17.4年)、2型糖尿病の発症1173例と 冠動脈心疾患327例を記録した。
→年齢・家族歴・血圧・生活習慣要因・血中生化学検査結果を調整した多変量モデルにおいて、大きな青年期BMIは糖尿病(ハザード比(HR)は最も低い十分位に対する最も高い十分位数が2.76;95%CI2.11-3.58)、冠動脈心疾患でも(HR5.43;95%CI2.77-10.62)有意な結果だった。
→成人期のBMIを調整すると、糖尿病リスクについては青年期BMIの有意な関連はなくなった(HR1.01;95%CI0.75-1.73)。冠動脈心疾患リスクについては(青年期BMIとの)有意な関連がなくなることはなかった(HR6.85;95%CI3.30-14.21)。
→多変量モデルで連続変数としてBMI値を調整すると、成人期で大きなBMIのみが糖尿病と有意な関連があった(β=1.115、p=0.003、p=0.89相互作用)。対して、青年期(β=1.355、p=0.004)と成人期(β=1.207、p=0.03)双方の大きいBMIは冠動脈心疾患とそれぞれに関連があった。


結論:
糖尿病のリスクはその診断直前に近い大きいBMIと主に関連するが、冠動脈心疾患のリスクは青年期と成人期双方の大きいBMIと関連があった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■研究対象の母集団または標本は本文中に記されていないが、母集団はイスラエル軍の男性?で、標本集団はこの調査が行われた時に25歳前後の軍人と判断する。

■成年期年齢の決定理由が不明だが、徴兵の開始年齢を青年期年齢に当てはめ、それを17歳と定義していると考えられる。Methodsの書き方が不親切で、こちらの想像力を要する。

■多変量モデルにおいて、交絡因子である成人期BMIは何歳のBMIなのかこの論文からは分からない。明確にすべきである。

■Figure2は、青年期および成年期BMIを5分位数に分類してHRを示している。その示し方は大変にわかりやすく今後論文を作成するための参考になった。



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