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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.1.16

2013年1月16日 担当:秋山

Dental status and incident falls among older Japanese:a prospective cohort study
~ 日本人高齢者における歯の状態と転倒の発生:前向きコホート研究 ~
出典: BMJ Open. 2012 Jul 31;2(4). pii: e001262. doi: 10.1136/bmjopen-2012-001262
著者: Tatsuo Yamamoto, Katsunori Kondo,Jimpei MIsawa,Hiroshi Hirai,Miyo Nakade,Jun Aida,Naoki Kondo,Ichiro Kawachi,Yukio Hirata
<論文の要約>
背景:
歯の咬合と下肢の動的機能とバランス能力は関連があり、咬合とその後の身体的な健康は関連があると報告がなされているが、咬合と咀嚼能力が実際に転倒の発生を予測するかどうかは不明である。

目的:
大規模な日本の高齢者の追跡調査において、現在ある歯の数の観点での歯の健康と、義歯の使用、咀嚼能力、転倒の発生の関連性の解明を目指す。

デザイン・セッティングと対象者:
日本の5つの自治体からランダムに選ばれた、ベースライン調査時の前年に転倒の経験がなく、身体・認知の障害がない、公的介護保険の給付を受けていない1763人の65歳以上の地域在住者。

主要アウトカム指標:
約3年後のフォローアップ調査時の、前年間の複数回転倒の自己申告歴による転倒の経験。存在する歯の数、義歯使用、咀嚼能力のベースラインデータは自記式質問票を用いて収集した。

結果:
研究対象の1763人のうち、86人(4.9%)の被験者が転倒した。すべての共変量を調整したロジスティック回帰モデルは、19本以下の歯を有する被験者のうち、義歯を使用していない被験者は20本以上の歯を持つ被験者と比べ転倒発生のリスクが高かったことが示された(オッズ比2.50、95%信頼区間1.21-5.17、p値0.013)。19本以下の歯を有する被験者のうち、義歯を使用している被験者は転倒のリスクは有意に増加しなかった(オッズ比1.36、95%信頼区間0.76-2.45、p値0.299)。咀嚼能力と転倒の発生では有意な関連は見られなかった。

結論:
歯が19本以下で義歯も使用していないことは、日本人高齢者の転倒の高いリスクに関連があった。高齢者の歯の喪失を防ぐケアは、転倒を防ぐ可能性がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■メタ解析では、転倒に関連付けられるものとして女性であることが挙げられていたが、本研究では男性の転倒のリスクが高かった。このことについて、ディスカッションでは他の先行研究と似た結果となったとしているが、この先行研究は外国人を対象とした研究であり、人種による違いについては述べられていない。

■研究において、転倒の度合(骨折するほどの転倒なのか軽く躓く程度の転倒なのか)が述べられていない。どの程度の転倒か、定義して研究を始めるのが望ましいと考える。

■結果において転倒者の割合は少ないと考える。このことは、転倒の度合の設定と関係しているのではないか。



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